第21話 ジムリーダー、現る

 意気揚々と賢者ビクターの家から出たところでタクトは気がついた。

 他の賢者様の居場所を聞けばよかった……。どうしよう、また戻るのもなんだか格好がつかないし。

 うろうろするタクトの背中に声をかける者がいた。


「メモリアシティを訪れた若きテイマー……やっぱりタクトだったか! ついに【ビクトリーロード】を歩み始めたんだな!」

「……え!? カイトにいちゃん!? どうしてここに!」

 金髪のさわやかな笑顔の青年が立っていた。

 彼はかつてタクトの家の隣に住んでいて、タクトを弟のようにかわいがって遊んでくれた、本当の兄のような存在だった。

 一人前のモンスターテイマーになるために修行の旅に出ていた彼とこのメモリアシティで再会できるなんて、タクトは思いもしなかった。


「今はここでモンスターテイマージムのリーダーをやりながら、マスターリーグに挑戦しているところなんだ」

「ジムリーダー! すげえ!」

「ビクトリーロードを歩むテイマーに最初の試練を与える重要な役どころさ。タクトもここのジムに挑戦しにきたんだろう?」

「いや、えっと、その」


 タクトはこれまでの経緯を話した。

 カイトは眉間にしわを寄せる。

「う~ん……スライムしか使役できない……そんなことがあるかなぁ。言っちゃあれだけど、ここの賢者様はどうもうさん臭くて。本当に七賢者のひとりかどうかも怪しい。西の大陸の【カルディ王国】に“本物”の七賢者がいる。その人を訪ねてみてもいいかもしれないな」

 西の大陸。

 海路、空路で行くにしても資金が必要だ。今の『おこづかい』では足りない。どうしたものか。


「そうだ、タクト。俺のメモリア・ジムに挑戦していけ。リーダーである俺を倒すことができれば、西の大陸に渡るための資金を援助してやろう」

「え! む、無理だよ……いきなりジムに挑戦するなんて。しかもスライム三匹しかいないし」

「スライムであっても、十分に鍛えていれば突破できる難易度だ。無理と決めつけずに、挑戦してみろ。っと、なんかみんなボロボロだな……今日はウチに泊まって、ゆっくり休息してからにするか。色々と話したいこともあるしな!」

 

 こうしてタクトの最初のジムチャレンジが始まった。

 頑張れ! タクトとスライムたち!

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