第10話 ヤバイやつ出た!

 広間に出た。

 その中心にいる巨大なモンスターを見た時、タクトの腰は抜けそうになった。


『グガアアアァァァァアアァァッ!』

 激しい咆哮。空気がびりびりと震撼した。

「そ、ん、な」

 嘘だろ? タクトは目を疑った。

もちろん、直接見たことはない。図鑑や、動画で見たことがあるだけだ。

それが何モノであるかは一目瞭然。


「──ドラゴン」


 最強格の超激レアモンスター。

 使役することはほぼ不可能とされている、孤高の存在。

 目の前のそれは、金色のウロコで覆われ、金剛石のような美しい瞳をタクトに向けていた。


「小型だが、古代種のドラゴンだ。まさに生きる伝説。この遺跡の守り神というところだろう。オレがどうにか隙を作るから、あそこにいるキミのスライムたちを連れて逃げるんだ」

 タクトに追いついたルーカスが示した方向。広間の隅で、サスケとリロイは震えている。


「頼むぞ……ヘルメスッ!」

 ルーカスは腰の小さなバッグから何かを取り出した。

 それは、青く輝くクリスタル。それがまばゆい光を放つと、ルーカスの前方に大きな大きな人型が照らし出された。

 それはやがてはっきりと姿を現す。

 石の、巨人。それは、すなわち──。

「ゴーレム!?」

 またまたレアモンスターの出現にタクトは驚いた。

 興奮が、恐怖に勝った。こんなの、めったに見られない! ヤバすぎる!


 そういえば、タクトは聞いたことがあった。大型のモンスターを使役するテイマーは、そのモンスターを連れて歩くのに難儀するという。そのため、【モンスタークリスタル】という小規模な異空間発生装置を持ち歩き、その中にモンスターを住まわせているのだとか。

 モンスタークリスタルの中の大きさは種類によるが、あの大きなゴーレムがのびのびと暮らせるだけのスペースがあり、家などの建造物を建てることもできるらしい。


「いけっ、ヘルメス!」

『ゴゴゴゴゴ』

 ルーカスのゴーレム、ヘルメスは右ストレートを繰り出した。

 巨大な拳を顔面に受けたドラゴンだが、まるでダメージはない。


『ガアアァァッ!』

「くっ……炎のブレスが来る! ヘルメス、【バリア】!」

『ゴウ!』

 ヘルメスが防御体制を取る。

 ドラゴンから灼熱の炎が放たれる。しかしそれは、ヘルメスの体に直撃することなく散っていく。


「すさまじいブレス攻撃だ。今の【バリア】だけでここまでヘルメスを消耗させるとは……」

 ヘルメスの目が、青から黄色になった。あれが赤になってしまうと、もう打つ手がない。ルーカスはこの状況を打破するために頭を回転させた。


 逃げるなら、今だ。

 でも、あの人を置いて逃げて、本当にいいのだろうか。

 このままだと、あのゴーレムもルーカスも危ない。タクトは何か手がないか、考えた。


 ──活路は、前にある。

 ある人の言葉を思い返し、タクトはぎゅっと拳を握った。


 そして彼は。

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