第9話 トレジャーハンター

『きゅぴぃ!』

「うわっ!? あ、あれ?」

 遺跡の通路を歩くタクトの前に、スライムが現れた。

 サスケとリロイではない。見た目は全く同じだが、違う個体だ。


「おや……さっき通り過ぎていったスライムたちのテイマーかな? ここは危険だぞ、少年。引き返した方がいい」

 スライムの後から、少し薄汚れた中折れ帽子とレザージャケットを身に着けた中年の男が現れた。

「あ、あなたは……?」

「オレはトレジャーハンター兼モンスターテイマーのルーカスだ。お宝を探し求めてこの遺跡にやってきたんだが、奥に凶暴なモンスターがいてな……ちと分が悪いんで、引き返してきたんだ」

「……この遺跡、何なんですか? 地図にも載っていないし、なんか変な感じが……」

「ん? キミはここの【封印の遺跡】の解除条件を知ったから、スライムを連れてここにきたんじゃないのか?」

「え?」

 封印の遺跡。解除条件。タクトにはさっぱりわからないことだった。

「するとあのスライムたちはそのために使役したわけじゃないのか。少年、古代の遺跡の中には封印を施されているものがあるんだ。その封印を解除するために【鍵】が必要なんだが、それが特定のアイテムだったりモンスターだったりするんだ」

 この遺跡の解除条件が、スライムだったというわけだ。とルーカスは言った。

 それでこの人はスライムを使役しているのか。それだけのためにスライムを使役したのかと思うと、タクトは少し残念な気持ちになった。


 ──そんなこと、ないよ。


「え?」

「どうした、少年。オレのスライムが何か気になるのか?」

「い、いえ……なんでもありません」

 まさか、ね。

 タクトは首を振った。


『ぴぃぃぃ!』

「……サスケ!?」

 通路の奥からサスケの声が聞こえた。何か慌てているような様子だ。


「あ、少年! 待て、そっちには──」

 タクトはルーカスの制止を振り切り、遺跡の奥へと走り出した。

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