第5話 勝敗

「サスケ、アタック!」

『ぴぃぃ!』

 先制攻撃を仕掛けたのはタクト。

 サスケというのはタクトが名付けたスライムである。


 素早い。しかし、それだけだ。

 スライムの突撃を受けても、ミカのファイアリザードにダメージはほとんどない。


「一撃で終わらせる! ファイアブレス!」

 ファイアリザードの口が大きく開かれ、そこから広範囲の炎のブレスが放たれた。


 それを予測していたタクトはすでにスライムに回避の指示を出していた。その指示が一瞬でも遅れていたら、スライムはファイアリザードの放たれた炎の餌食になっていただろう。


「【ウィンド・ステップ】!」

 タクトは風の補助魔法でスライムの速度を上げた。

 そして再び、アタック。しかし効果はない。


 ミカは苛立ち、そしてため息をついた。

「何をやっても無駄なのよっ! ファイアテイル!」

「サスケ、硬くなれ!」

 サスケは少しだけ高質化し、そしてその場から飛び退いた。

 しかし、回避は間に合わない。直撃は避けたものの、炎属性の攻撃を受け大ダメージだ。


 ミカとファイア・リザードは勝利を確信し、前に出た。

 余裕。

 所詮、スライムなんて雑魚だ。

 彼らが気を抜いたその瞬間を、タクトは待っていた。


「加速っ!」

 タクトは【ウィンド・ステップ】を重ね掛けし、さらに突風魔法でスライムを高速で走らせた。

「サスケ、さらに硬くなれ!」

 鉄のように高質化したスライムが、弾丸のように跳ぶ。ファイアリザードの眉間目がけて一直線。


 ファイアリザードは反応することができなかった。

 そして、無防備の状態での──直撃。


 クリティカル・ヒット!


 ファイアリザードは脳を揺さぶられ、気絶した。

 ずしん、と倒れたファイアリザードを見て、タクトも、ミカも、立ち会ったジョセフも唖然とした。


「しょ、勝負あり……。勝者、タクト!」

 ジョセフが勝利を告げると、我に返ったタクトは小さくガッツポーズをした。

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