第31話 迷いの森、入り口

 迷いの森

 危険レベル:D(危険度低い)~A(かなり危険)


 森の【深部】へ行くほど、危険レベルが増す。凶暴なモンスターも増えていく。

 その深部には【ゲヘナの巨釜】という超高難易度のダンジョンが存在する。その危険度は最高危険度のSS。まず高レベルの冒険者たちがパーティを組んでもこの森の【深部】へたどり着くことが困難な上、【ゲヘナの巨釜】に存在するモンスターはテイマーが使役できない程の、それこそドラゴンクラス並に危険レベルが高いため、まだ誰も踏破したものはいない。


 しん。と森は静まり返っていた。

 【森の入り口】はモンスターよりも動物の姿を多く見かけるらしいのだが、気配はない。

 いや、何かいる。タクトが視線を感じると同時に、ポチが唸った。


『タクト様、上です!』

 プリンの声を聞き、タクトは上を見た。

「うわっ!」

 危なかった。プリンの声がなければ、頭部に投げつけられてきた石を回避することができなかった。


『キキキキッ!』

 樹の上には猿のモンスター【エイプ】たちがいた。

 迷いの森の番人と呼ばれる彼らは、本来この【森の入り口】には棲息していないはずだった。

 危険レベルはさほど高くないものの、群れで行動するため厄介だった。彼らは自分たちの住処を守るために、『侵入者』を攻撃する。しかし刺激しない限り、エイプたちから手を出してくることは少ない……のだが、樹の上にいる彼らは気が立っているように見えた。

『キキキッ! ウキキキ!』

『キーキー!』

 プリンが訳すまでもなく、歓迎されていないことは一目瞭然だった。


 樹の上から何か大きなものが降ってきた。

 それは白い毛並みの、ひと際大きなエイプだった。

『ニンゲン……森カラ……デテイケ』

「!」

 人語を操るエイプはかなり珍しい。恐らくこの群れのボスだろう。

「僕はおまえたちの住処を荒らしに来たんじゃない。森スライムに会いたいんだ。ここを通してくれないか?」

『……デテイケ……!』

 白いエイプは歯をむき出しに唸った。


『ガルルルル!』

『キー!』

 ポチが唸り返すと白いエイプは後退し、距離を取るものの威嚇の姿勢は崩さなかった。

 これ以上刺激をすれば、他のエイプたちが一斉に飛び掛かってくるかもしれない。

 

 いきなり困ったことになった。タクトは先行きが不安な気持ちとなり、この状況を打破する方法が思いつけずにいるのであった。

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