第72話 女神像

「お久しぶりですなあ」


 バッカザッハ侯爵はユメル侯爵を見てそう言った。


「は、はい」


「どうした? 元気がないですなあ」


「は、はい」


 ユメル侯爵は元気が無かった。

 いつもの感じではない。

 それは他の者も感じていた。


「で、今日はどういった議題で? フェミル殿」


 バッカザッハは問い掛けた。

 諸侯連合の会議は定期的に行われるが、今回の様な緊急会議は珍しい。

 年に一度あるかないか。

 しかも、カドレア家が参集したのは何年ぶりのことか。


「今日集まってもらったのは他でもない」


 フェミルはそう言うと、卓の上に、女神像を置いた。

 ユメル侯爵の顔が青ざめた。

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