第20話 助けたのは貴族だった! 思わぬ出会いで太いパイプゲット!

「てめぇら! 覚えてろぉ!」


 ならず者達は、捨て台詞を残し去って行った。


「おい、大丈夫か?」


 悪党どもを蹴散らしたタルボは、騎士風の女に近寄る。


「は、はい。ありがとうございます」


「怪我してるじゃねぇか」


 タルボは彼女に傷薬と体力回復薬を渡した。


「すいません。何から何まで……」


 見たところそれほど深い傷ではなさそうだ。


「じゃ、気を付けろよ」


「待ってください。あなたはさっきギルドで私と話したかったんですよね」


 立ち去ろうとするタルボを呼び止める騎士風の女。


「ん……ああ、けど、俺みたいな、どこの馬の骨ともわからん奴とは話したくないんだろう」


「は、はい……。いっ、いえ、そういう訳では……」


「いいって、人相の悪さなら自覚してるし。気にしてねぇよ。俺もさっきのならず者と変わらねぇ」


 タルボはこうやって、騎士風の女に上手く近づこうとしている様だ。

 要は、こちらからではなく向こうから、話し掛ける様に誘い込んでいた。


「ねぇ、マーシャ。この人達、私達を助けてくれたんだよ。きっと良い人だよ」


 ワンピースの女の子が騎士風の女に声を掛ける。


「そうですよね。フェミル様。人を見た目で判断してはいけませんね」


 ワンピースの女の子はフェミルと呼ばれていた。

 様付けされているところを見ると、高貴な出の娘か。

 騎士風の女、マーシャが居ずまいを正す。


「私の名は、マーシャ。カドレア侯爵家に仕える騎士です。先ほどは、命を救ってくれて、礼を言わせでください」


「なぁに。当然のことをしたまで。……って、あんた本当に騎士なのか。見た目だけでなく。……ってか、Bランク冒険者じゃあないの?」


「はい。あれは仮の姿です。ま、市井を探索するには身分を偽っているのです」


「ふーん。俺と同じだな」


「え?」


「あ、いや、なんでもねぇよ。だが、その女の子は一体? こう言っちゃなんだが、街の中を調査するのに、子供連れてちゃ何かと危ないだろ? 今みたいに」


 と、言いながらも、タルボはムネタカを背中に背負っていることを思い出す。

 自分だって人のことを言えない。


「マーシャは私の遊び相手なの。こうして街の中を一緒に散歩してくれるの。さっきも、悪い奴から私を守ってくれたんだから!」


 フェミルが自慢げにマーシャのことを教えてくれた。


「フェミル様。私は大丈夫です」


「うん!」


 それを聞いたフェミルは笑顔で頷く。


「ここはまだ物騒です。表通りの喫茶店にでも入りましょう」


 マーシャの誘いで、めぼしい喫茶店に入る。



「俺の名はキルオ。ま、観光客だ。ユメル領からここに来た。そして、背負っている赤ん坊はムネタカ。俺の息子だ」


 タルボはとりあえず、偽名のキルオとして軽く自己紹介した。


「私の名はマーシャ。先ほども言ったように、カドレア侯爵家に仕える騎士。そして……」


 マーシャがフェミルの方を向く。


「私の名前はね、フェミル! カドレア家の娘! 5歳よ!」

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