第65話 もういないのかな……
「あ? てめぇ、捕らわれの身で偉そうなこと言ってんじゃねーぞ!」
ローランは強気に出た。
側にペルがいるから強がっているのが分かる。
ちょっと声が震えている。
「あ?」
「あ?」
「おぉ?」
「……おっ、おうぅ……」
ムネタカに睨みをきかされて、尻込みするローラン。
「ねぇ、ムネタカ。一体何があったの?」
ペルの問い掛けを無視し、ローランの首に手を回すムネタカ。
「わっ!」
音もなく背後に回られ、自分の首に手が回っているのに気づき、驚くローラン。
「何だよ!」
「死にたいか?」
ローランの首には、ムネタカの手刀が付きつけられている。
「今、生かすっていったじゃないか!」
「お前なんか、いつでも殺せる。だから、生かすも殺すも俺の自由」
「くっ……」
「大声出すな」
分かってるなと言わんばかりに、手刀がローランの首にめり込む。
「いっ……」
ローランが呻く。
「女神像は何処だ?」
「え?」
「どこだと聞いている」
「なんで、それを……」
ムネタカの尋問に、戸惑うローラン。
「ムネタカ、やめて! その人は、私をここまで案内してくれたの!」
ペルの叫びを無視するムネタカ。
「10年前、カドレア邸宅からお前の親父が盗んだ。それを返してもらう」
「う……」
「知ってるんだな。言え」
ローランは命と隠し事どちらが大事か天秤にかけている様だ。
「ねぇ、ムネタカ! あなたってそんなに野蛮な人だったの!」
「黙れ」
ペルを一喝するムネタカ。
「うう……」
目に涙を浮かべるペル。
「いてぇ」
首にめり込む手刀。
「私を助けてくれたムネタカは、もういないのかな……」
涙をこぼすペル。
(助けた?)
さっきから何を言ってるんだ、この女は。
ムネタカはペルのことが不思議だった。
だが、今は彼女と話す暇は無い。
取り返すものを取り返して、早くここを去りたい。
「言え!」
「親父の部屋の本棚に隠してある扉……その奥の部屋」
ローランが呻くように言う
「よし、案内しろ」
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