第5話 盗賊団と貴族の関係
殴られたルヒトはふっとばされて岩の壁に激突した。
勢いで飯の椀が転がった。
「い、いてえ……。殴る事ねぇだろ!」
頬を赤く腫らしたルヒトはタルボに怒りの視線を向けた。
だが、タルボも怒りは収まっていなかった。
「俺たちは盗賊だ。だが、義賊だ! 悪い奴らを傷付けることはしても命までは取りはしないぜ! だから、アサシンなんて物騒な存在をこのギト盗賊団で育成するつもりはないぜ!」
どうやらこの盗賊団にはポリシーがある様だ。
(ちょっとかっこいい)
宗孝はそう思った。
「だっ、だけど、いいのかよ。アサシンを用意する様にとユメル侯爵から言われてるじゃないか」
アサシンとはつまり暗殺者のことだ。
人を殺す者。
そして、それをユメル侯爵という貴族が欲している。
(え?)
ギト盗賊団は貴族と付き合いがあるのか。
宗孝はちょっと混乱した。
ギト盗賊団は義賊と称して不正に金を溜め込む貴族を成敗している。
なのに、貴族と付き合いがある。
それとも、ユメル侯爵という人物は、庶民に親しまれている良い貴族なのだろうか。
「……ユメルが何を言おうが、親父が決めたこの起きてだけは変えられねぇ。人を殺せばいずれ、自分が殺される」
タルボは拳を握り締めたまま、皆に言い聞かせる様に言葉を発した。
すると、背後から甲高い声がする。
「私の名を呼ぶ者は、誰ですか?」
コツ、コツと足音が聞こえる。
白いマントに白い制服。
胸には勲章。
高く尖った鼻に、二重の目。
肩までのストレートの金髪。
紫色のフードを被った従者を引き連れ、その男は現れた。
「ユメル様!」
マイファが頭を下げる。
それに合わせて他の子分達も頭を下げた。
タルボだけ頭を下げずに、じっとその男を見ている。
(これがユメル侯爵か。キザそうな奴だ……)
宗孝は長身のその男を見て、そう思った。
タルボが口を開いた。
「侯爵様ともあろう者が、こんな荒くれ者のアジトにわざわざ出向くとは、一体どういうことだ?」
「タルボ。口を慎みなさい!」
マイファがタルボを叱る。
「まぁ、まぁ、マイファさん。私は気にしていませんよ。タルボさん、夜分遅くにすいません。本当は明日、我が邸宅でお会いする予定でしたね」
「おう」
「だが、私の方で急用が出来てしまった。そこで、急遽、夜の散歩と称して、ここにお邪魔した」
宗孝はユメル侯爵とギド盗賊団の関係が気になった。
「今後の仕事のことについて、そして、魔石の存在……。本当は明日話す予定だったことだろ?」
「そうです」
タルボの非礼に対し、貴族の余裕なのかユメルは怒りもしない。
にこやかに応対している。
(それにしても、魔石って言ったな)
宗孝は異世界ファンタジー定番のアイテム名称が登場したことで、胸がわくわくして来た。
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