第45話 助けた子犬が転生した先は……
時を同じくして、ムネタカと同時に、世界ナンバー539に生を受けた者がいた。
「生まれました。オズモンド様。元気な女の子です」
執事にそう言われたオズモンドは、会議室にいる全員に黙礼し、その場を立った。
◆
「よくやった。セシリア」
「はい……あなたが望む男の子では無かったのですが……」
「いや、気にするな。子供が元気であればそれでいい」
オズモンド国王は、セシリア王妃に頭を下げた。
セシリア王妃が横たわっている横には、生まれたばかりの赤ん坊が寝ていた。
「だあだあ……」
「おお。可愛いのぉ……」
オズモンド国王は我が娘を抱き上げた。
正妻が初めて産んだ子供だ。
大事に育てなければ。
「そうだな、名前は何にしよう」
「私、この子を産み落とす時に頭に浮かんだ名前があるのです。
「なんだ? セシリアよ、申してみよ」
オズモンド国王は、セシリア王妃を見てそう言った。
セシリア王妃の美しい唇が開き、小さな言葉が発せられた。
「……ペル、というのはどうでしょう」
「ペル……か……」
この世界に余り無いというか、無い名前だ。
「ふむ。一体、どういう意味だ?」
オズモンド国王は、顎に手を当て考え込んだ。
「……意味は……特にありません。ただ、直感というか、この子が生まれる瞬間、願ったのです」
「願ったとな?」
不思議な出来事に首を傾けるオズモンド国王。
「はい。私の名前は『ペル』です……と」
セシリア王妃の顔が笑顔になった。
ペルという名前に、赤ん坊が笑顔になり、手を叩いたからだ。
「分かった。お前は今日からペルだ。ペル、お父さんだぞ」
オズモンド国王は、ペルを、たかいたかい、した。
「きゃっ、きゃっ!」
ペルは手を叩いて喜んだ。
そして、ペルはこう思った。
(ムネタカもこの世界に来てたらいいなあ……)
ペルはムネタカが現世で救った子犬だった。
ペルは再びムネタカに会いたかった。
会ってどうしようかって訳でもない。
ただ、会いたいだけだ。
こうして、ペルはディレックス王国の国王の娘として生を受けた。
それは、彼女が勇者として生まれたことを意味していた。
それから、10年の月日が過ぎて行った。
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