第67話 扉の向う
「この本棚を、ゆっくり横に押すんだ」
ローランが立派な本が並べられた本棚の前で言う。
ユメル侯爵の部屋に入れた。
この本棚の向うにある扉、その先に、女神像がある。
「押せ」
「僕が?」
「そうだ。何も無かったら、殺す」
「だ、大丈夫だよ。今度は嘘を付ついていないから」
ローランは先程殴られた右頬を撫でた。
「そうよ! ムネタカと私に嘘の道を教えたら今度こそ、承知しないから!」
ペルが口をとがらせる。
道案内のローランは、ある意味、ムネタカの命を握っていた。
ここに来るまでの間、その案内は、ムネタカを殺すために案内した物もあった。
わざと、兵士が多い場所を通らせようとしたり、全然目的地と違う場所を歩かせようとした。
その度に、先を行く、ペルに感づかれ、ムネタカに殴られていた。
「うっ……」
ローランの力では本棚はビクともしない。
「はぁ、はぁ……」
「だらしないな、お前」
ムネタカは無表情のまま、呆れた。
「ほんと。もうちょっと騎士になるんだったら、頑張りなさいよ。私を振り向かせたいんでしょ」
ペルにまで呆れられている。
「くそっ!」
渾身の力で本棚を押すローラン。
だが、びくともしない。
「ほんとに重いんですよ」
「分かった。私がやる」
ペルが本棚の横に行く。
そして、本棚を押す。
「ほら、簡単に動くじゃない」
ペルは片手で本棚を横にずらした。
「ええ!? こんなに重いのに! さすがペル様!」
事実、本棚は100キロ近くあった。
ペルは片手でちょっと押しただけでずらした。
「これか」
扉だ。
鉄の小さな扉。
鍵は、本棚にある赤の背表紙の本の中にあった。
本がくりぬいてあり、そこに鍵が入っていた。
「あれか」
部屋の中に入る。
そこは紙面四角の青い部屋。
ムネタカの正面の木の棚に、女神像やその他の財宝が置かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます