第27話 真相はすぐそこに
誰の手も行き届いておらず草や木が好き放題成長しているが、降りたその場所は木が生えておらず大きく円状に開いている。
「お疲れリアム、ちょっと待ってな」
その場に伏せて翼を畳んだリアムは鼻をシャルルに近付けそっと瞳を閉じた。
「──なにやってるんだ?」
「前に言ったけどリアムが人形なのは魔力でそうしてるからで、この姿になったって事は魔力が尽きてるって訳よ。だから少し分ける」
「──俺は見てるだけでいいのか?」
「そうだな……テントの準備でもしてもらおうか、あとお腹空いた」
「テント? テントなんて持ってないしお前も持ってないだろ? まさかその小さい袋に入ってる訳ないし」
「って思うだろう? 世の中はどんどん便利になるのさ」
シャルルは袋から何かを取り出しそれをオースティンの方へ放り投げた。それは四角い形をした魔法具で見た事あるデザインだった。
「なぁ、ひとつ気になったけど魔法具ってどれも同じ形してんのか?」
「別に決まりはないよ、作る時に楽ってだけでその形が多い。──使い方は簡単でちょっと魔力を流せばボタンが浮き上がるからそれを押せばいい」
「魔力を流すか……いざやれって言われたら緊張するな」
「はは、別に大した事ないよ、拍子抜けするレベルで」
それではいざ! と言うタイミングでちょうどシャルルも魔力を分け与えるため手をかざし始めた。
まだかじった程度ではあるが魔力についてノーツから教わった後にじっくりと観察すると、当事者ではないのにこれまた繊細で綺麗な魔力の流れを肌で感じる。
それに比べてまだまだ荒さのある魔力と比べてしまうとダムが決壊する様に己の自信が放出されて行ってしまう。
「いやいや、それは現状の話だ! 時期にあいつにも見劣りしない力を手に入れてやるぞ!」
「きゅい、きゅい」
「お! お前もそう思うか? いい子だな、ほーらヨシヨシ」
赤竜の幼体の応援もあり自信を取り戻したオースティンは魔法具に手をかざし魔力を流す。
「……どうだ? まだか……どうだ! くっ! まだまだ……」
荒い魔力を流し続けていると、箱が少し開き中央に埋まっていたボタンが浮かび上がって来た。
「お、おお! 来たぞ来たぞ!」
意外と上手く行った事による興奮が冷めやらぬままボタンを押そうとしたが、それよりも早く反応した赤竜の幼体が先にボタンを押してしまった。
「な!? お、俺も押してみたかったのに……ガクッ……」
「お、上手く行ってるじゃん」
「んあ? ──そっちは終わったのか?」
「終わったよ、あと数分したら元通りかな」
「そうか……じゃあそれまでにテントを……あれ、この魔法具反応してなくね? ボタンは押したぞ、
「言うの忘れてた、ボタンを押した後は一定の距離離れないと動かない」
「……! そうか、テントを張るスペースが見つかるまで反応しない仕組みなのか」
「へぇ、お前って意外と察しがいいよな、魔法はぐちゃぐちゃなのに」
「むむ、お前はいつも二言ぐらい余計だな」
赤竜の幼体を抱えながらその魔法具から離れると、警告音の様な音を発したのち、いきなりテントが目の前に湧いて出た。
予想ではもっと段階を踏んで完成に近付くと思っていたがこれは予想外、大きな欠伸をしていた隙に完成してしまっていた。
「……これの原理ってどうなってんだ、このテントも魔法で作った物なのか?」
「いやいや、テントは普通のテント。原理もなにも単純にテントをリバースフィールドに格納できるってだけ」
「ごめんよく聞こえなかった、りばーふぁいるど?」
「リバースフィールド、細かい事はいつか説明するかも、今は魔法で作り出した裏の空間とだけ覚えてればいい」
「──えぇなんか急に方向性変わったな、難しくなりそうな予感」
「あ、そうだ。先に温泉入るか?」
「温泉? この近くに温泉が?」
「すぐそこに、あ、ほら。あそこにうっすらだけど湯気が見えるだろ? あれだよあれ」
「へぇ、もしかして秘境ってそう言う意味?」
「まぁそれもそうかな」
「ありがてぇな、じゃあ
テントの中に入っているタオルだけを手にして赤竜の幼体と共に温泉に向かうと。
リアムの体が淡いうすら緑の光に包まれているのを目にした。シャルル曰く時間が来たとの事。
「今からリアムは人形に……それにしても神聖な感じがして綺麗だな。──消えてしまいそうなぐらい」
まるで光に誘われこのまま姿を消してしまうのではと心配になったが、その不安を他所に少しずつ普段の人形へと変化している。
オースティンはその様子を突っ立って見ていたが、大きめの布を持ったシャルルはリアムに近付いた。
一体なにをするのかと不思議に見つめていたが、人形に戻ったリアムは服を着ていないまっさらな状態だった。
オースティンは咄嗟に目を逸らした、次に2人の様子を見た時は布を手にしていたシャルルが既にリアムを包んだ後だった。
「びっくりした……それにしてもあの姿、人形に戻るって言っても角と尻尾はそのままなのか」
角と尻尾をマジマジと見つめている間2人はなにやら小さく会話をしていた。
「うん、分かった。──オースティン、ちょっとコイツ疲れ過ぎたみたい、先に寝かせる」
「え? あぁ分かった、じゃあ俺達は温泉入ってくるよ」
「了解、せっかくだしリアムも一緒に入れば良かったのにな」
その言葉にオースティンは盛大に吹き出した。
「ぶふぅ! あぶね! 危うく吹き出す所だったぜ。──シャルル、それは色々まずいと思うが」
「え? まぁ確かにな、コイツ風呂とかあんま好きじゃ無いし」
「いやそっちかよ、そうじゃなくて俺は男だぞ。いくら竜だからって言っても異性と温泉に入るのは不味いって。じゃあ行ってくる」
「……異性? ……あぁ、そう言う事か、勘違いしてたみたいだな。──反省反省」
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