第71話 幼稚舎幼児世界大戦 後編
「エイコ先生!サキ先生!」
渋谷園長は号令をかける。
小さな戦士たちにとっては何時間にも感じる激しい戦闘であったが、園長たちにとっては異変に気がつくまでのほんの10分足らずにすぎない。
「エイコ先生、サキ先生、とりあえず泥まみれの園庭の
「外に出た子は半分くらいね、アグネス先生、中の
「イエス!ボス!」
渋谷園長は
「エイコ先生、サキ先生、
薫子・エバンスとエマ・藤原は裸で至近距離に居た。
ぬるま湯のシャワーで泥を落とされながら。
「薫子ちゃん、だい好き」
エマ・藤原は薫子に抱きつきキスをする。
実はエマは薫子が大好きで仲良くなりたかったのだ。
「アグネス先生!、替えの
大人から見ればとるに足らないことであっても、まだ世界が狭い幼児にとっては生死に関わるくらいに感じる大事件なのである。
あなたは幼い頃に育った街を久しぶりに訪れた時に「こんなに狭い場所だっけ」とびっくりすることがないだろうか?
そのくらいの感覚の違いがあるのだ。
渋谷園長は当事者を集めて事情を聞く。
「ケンカの原因は何なの?」
「シュウくんが、リコちゃんのクマのジミーの手をちぎったの、だから突き飛ばしたの。」
園長は双方から事情を聞き、優しく諭す。
ところでケンカの仕方は令和7年にある幼稚園教諭の提唱した方法が指導要領に記載された。
ケンカは幼児が社会を学ぶためにはケンカも必要であるという理論と、ケガをさせてはいけないということを両立させるために考えだされた方法。
それは、友達とケンカをするなら叩いたり蹴ったり、怪我をさせる方法はいけない。
どうしてもケンカするなら「こちょこちょ」にしなさい。というもの。
現在の幼稚舎では全ての園児に徹底されている。
今回の幼児世界大戦も雨の園庭で泥の中での乱闘にはなったが、主な攻撃方法は全員「こちょこちょ」であった。
これはこれでなかなかきついものではあるが、少なくとも怪我をする可能性は低くなるのは間違いない。
こうして幼稚舎幼児世界大戦は終結した。
薫子は一年生になる前に友達100人できちゃった。
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