第64話 四輪自動車文明と六本足機械馬文明

 ヨーロッパの一角にあるコーネリアヘルモーズ大公国はそんな一般の四輪車文明をたどらなかった。


 1764年、コーネリアヘルモーズ大公国の天才技術者、ハンス・エバンスによって他国では不可能とされた「馬」の機械化に成功したからだ。

 六本足機械馬文明の登場である。


 ハンス・エバンスは自然の馬の4本足に拘らず、北欧神話に登場する6本足の神馬スレイプニルにヒントをえて、駆動脚くどうきゃくとして4本、操舵脚そうだきゃく2本の計6本足とすることで当時の舗装ほそうもされていない荒れた道を快適に移動できる仕組みを開発した。

 その頃四輪の自動車はゴム板を貼り合わせたお粗末なタイヤで最悪の乗り心地だったのと比較しても合理的である。

 

 6本足のカラクリは複雑だと思われるかもしれないが、当時の蒸気機関車は直線運動をわざわざ回転運動に変換するという実はかなり蛇足で複雑極まりない機構である。


 これに対して機械馬の足の運びは基本的に前後の直線運動であり、蒸気エネルギーを無駄なく伝達することができる。

 昔ゼンマイで動くカブトムシのおもちゃがあったのをご存知の諸氏もおいでだろうが、昆虫の動きと基本は変わらない合理的なものなのである。

 現実世界でも自律走行ロボット犬が軍用に開発されているが、基礎理論はそれと変わらない。

 実は四輪車は瓦礫がれき一つで走れなくなるという実に不合理な乗り物なのである。


 

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