第95話 代理戦争の連鎖

 薫子たち3人組も2年生、3年生と学年が進む。

 

 その間にも世界規模での代理戦争が各地で勃発していた。


 一番の原因は世界規模の食糧危機である。

 特にアフリカ大陸や南米では極度の小麦不足から食糧を奪い合い、宗派間、民族間の争いが激化して戦闘が頻繁に行われていた。

 そのバッグには大国のいくつかがつき、武器弾薬を供給する。

 もはや大国同士の直接対決は避けられないところまで来た。

 プ連と中亜は国連を脱退し、軍拡に舵を切った。

 アメリカとNATO諸国も着々と新兵器開発を進める。


 一方、薫子が4年生になる頃には日本国も上位の巨大な加速器スプリング∞を稼働し、実験用、として数十グラムの反水素を常時保有できるまでになっていた。

 薫子は小学4年生ながら川嵜悟朗研究室の正規の研究者としてデスクを与えられ、日々、長期保管容器の小型化の研究を任されるまでになっていた。

 

 この頃、薫子は生まれてことのかた感じたことのない疲労感と無力感、合理的な理由のない悲しみなどに襲われてしまうことが多くなってきた。


 もうあの美しい男の子陽電子と電子ちゃんには二度と会えない気がした。

 そんな時には放課後研究室まで迎えにきた蒼に抱きつきしばらくそのまま涙を流すこともあった。

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