第90話 ネクロマンサー
ゼロ・ポイントフィールドとは大きなレコード盤のようなものである。
いや、ホログラム理論で記録されているので大きなブルーレイと言った方が理解しやすいかもしれない。
この巨大すぎるブルーレイには宇宙が始まった時からの全ての波動エネルギーの振る舞いが完全に100%記録されている。
先話でも書いたが、量子力学的には物質や物体も全て波動エネルギーの塊であり、硬さや手に触って感じる感触なども全て波動エネルギーの反発によって生じる錯覚である。
古代の昔から実はゼロ・ポイントフィールドに親和性の高い人間は実は数多く存在しており、大きなレコードをなぞることで過去の偉人のみならず、亡くなった人の残したレコードの凹凸でその考え方や記憶を再生することができる。
本物の占い師や巫女、イタコなどもその種の親和性の高い人間だったのである。
タネを明かせば大したことではないが、当時、いや、現代においても胡散臭い魔女のような扱いをされているのは親和性の少ない人間からすれば仕方ないのかもしれない。
未来の記録はないので占い師は少し違うかも知れないが、現時点までの情報が手に入れば、お天気レーダーを見ているが如く、この雲が15分後に抜けて晴れることなどは容易にわかってしまうことはスマホを持つ我々ならすでによく知っていることである。
未来の予知がある程度できるというのはそういうことである。
ゼロ・ポイントフィールドに親和性が高いと信長のように地球が球体であるということも容易に信じられるようになる。
万有引力を発見したニュートンも、ガリレオガリレイもその種の人間であったのだろう。
薫子も時代が時代ならば、魔女かネクロマンサーのような不当な扱いを受けたかもしれぬ。
量子力学が発達した現代に生まれたことを幸運に思ったほうがいいかもしれぬ。
ずいぶん遠回りな説明になったが、薫子は「リケジョ」の片鱗を体現し始めている。
「反物質」に生涯を捧げることになるのはまた後日談で。
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