第91話 明石市立航空宇宙大学川嵜研究室

 薫子の母は地元明石の川嵜重工の技術者である。

 薫子の父は明石市職員であった。


 その影響をもろに受けて薫子は明石市立航空宇宙大学附属小学校に入学したのであるが、薫子の母は薫子のいつも話す精霊の話が「反物質」の話であると気がついていた。

 一般の親御さんなら夢見がちな幼児のタワゴトとして聞き流していたかもしれない。


 小学校入学と同時にエネルギーとしての反物質の研究室があるということで父と母同伴で研究室の川嵜教授に挨拶に行った。


 川嵜教授は薫子の母とは大学の同期でもありスカイアーク乗用ドローン同好会の仲間でもあった。


 「やあいらっしゃい。」


 マッシュルームカットに鼻の下のちょび髭、何というか、教授らしい?雰囲気を持っている。


 「ほら、薫子、先生に挨拶しなさい。」


 薫子はそこは新一年生らしく少しはにかんでからはっきりと挨拶した。


 「初めまして、薫子・エバンスです。お会いできて嬉しいです。」


 「固い挨拶はそのくらいにして先生と楽しいお話しようか。」


 「ハイ!」


 薫子はいつもの薫子節で堰を切ったように話し出す。



 父と母はその様子を見ながら。


 「薫子、楽しそうだな。」


 「そりゃそうよ、大好きな友達素粒子の話、わかってくれる人ってそんなに多くないわ。」


 父と母はお互い顔を見合わせてクスリと笑った。


 しばらくして川嵜教授が戻ってくる。


 「いやあ、薫子ちゃん、すごいね、私の論文でどん詰まりになっていた問題点と疑問点、薫子ちゃんが全て精霊さんに聞いてくれて教えてくれた、論文、完成しそうだよ、

薫子ちゃんの名前、川嵜悟朗と、薫子・エバンス、共同論文ということで

載せてもいいかな?」


 量子力学と素粒子物理学の世界的権威、川嵜悟朗教授の思わぬ言葉に父と母は改めてすごい勢いで顔を見合わせた。



 こうして6歳の薫子の名は世界中の科学者の間を走り回ることとなった。

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