《書籍化!好評発売中!》ゼロ・ポイントフィールドに愛されたフロイライン

七星剣 蓮

第60話 賢さの正体

 あなたはゼロ・ポイントフィールドという言葉を聞いたことがあるだろうか。?

 アインシュタインの時代にはもうあった仮説である。

 (ここから先は先端の量子力学りょうしりきがくの話が入ってくるので難しい話が苦手な方は飛ばして61話から読んでいただくとよい。)


 それは科学と宗教の狭間、いや、科学と不可思議の境界に横たわるものである。


 渡り鳥とはどうやって帰巣本能きそうほんのうを持つに至ったのか、そもそも本能とは?


 人間の記憶とはどのような形で記録されているのか?

 

 最初に科学と宗教の狭間と書いたが、宗教書には実は現代の先端科学で解明されつつある事実と酷似こくじした表現が多い。


 例えば身近な般若心経はんにゃしんきょう冒頭には観自在菩薩かんじざきぼさつが意識の奥深くにダイビングした時にこの世の有りよう五蘊皆空ごうんかいくうを悟ったとある。


 五蘊皆空とは世の中のすべのものは実態のないものという意味である。

 私たちの身体も身の回りのものも分子や原子、素粒子そりゅうしの実態も実は物体、というものは全て波動状はどうじょうのエネルギーのかたまりであることがわかっている。

 鉄箸てつばしでガラスを叩くと音がし、跳ね返るのはそれぞれのエネルギーが反発しあうことで起きる現象であり、いわば全て錯覚さっかくなのである。


 言い換えれば物質が崩壊するとその分エネルギーに変わる。

 原子力エネルギーがその代表例だ。

 これは火が燃えるなどの化学反応ではなく、物質そのものが持つエネルギーなのである。

 また、私たちの身体や地球そのものも素粒子から見ればスカスカの隙間だらけであり、ニュートリノなどはほとんどが素通りしてしまう、これも五蘊皆空と言えるだろう。

 話が脱線したが、仏教の教えに、眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那識・阿頼耶識の段階がある。

 観自在菩薩がダイブしたのがこの阿頼耶識であり、まさにゼロ・ポイントフィールドだろうと推測することができる。


 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンスで登場した阿頼耶識あらやしきシステムとはまさにこれである。


 思うに、宗教の教祖とは当時の最高の科学者でありその教えは科学技術そのものではなかったのだろうか。

 量子力学を学ぶにつれだんだんとそう思うようになってきた。

 それは他の宗教、キリスト教やイスラム教も同じような表記があるからだ。


 ゼロ・ポイントフィールドとは現存するエネルギーの動きを記録する巨大、いや量子真空りょうししんくうに無限に広がるディスクである。

 量子物理学りょうしぶつりがく的には全てのものが「波動はどうエネルギー」であり、波動干渉はどうかんしょうを利用したホログラム原理で記録されていると考えられている。

 ホログラムとはその一部にアクセスするとその一部と同時に全部の情報にも同時にアクセスできるという性質がある。

 アクセスする範囲が一部か全部の概要か、全部のより詳しい概要か、全部を精細に知ることができるかはアクセスする側の能力次第と言える。

 またもう一つの性質として引き寄せの原則、つまり類似するもの同士の情報がより濃く集まるというものもある。

 

 阿頼耶識ゼロ・ポイントフィールドにアクセスすると現時点までの全ての情報、全ての人の思考から物質の動き、蟻の歩みや微生物が左に曲がった、素粒子が分解したと言ったまさに全てのエネルギーの動きが記録されているのでそこから導かれる少し先の未来もある程度予測することもできるのだ。

 また、近しい仲間内なら阿頼耶識ゼロ・ポイントフィールドを通して念話も可能となる、これはフィクションではなくゼロ・ポイントフィールド仮説が正しいと証明されればれっきとした科学技術ということになる。

 実際、小鳥や虫の大群はそれぞれ会話しているわけでもないのに整然と一つの生き物のように自在に飛ぶ。

 最初に述べた帰巣本能も説明がつくのである。

 過去の多くの学問や芸術の天才も何かの拍子にこのゼロ・ポイントフィールドに触れたと思われる経験をしている。

 まさに「降りてくる感覚」だろう。


 

 初代ガンダムでもニュータイプと言われる少年少女は離れている空間で意思が繋がる感覚があると話している。

 これもゼロ・ポイントフィールド仮説で説明することができる。

 もはやこれはおとぎ話ではないのだ。


 さて本題に戻る。

 賢さがテーマであるが、記憶とゼロ・ポイントフィールドが常時接続状態にあるなら天才といわれる人達の定義が変わってくる。

 もちろん厳しい修行を積んだり、日々の努力で引き寄せ性能をあげたりしてゼロ・ポイントフィールドに広くアクセスできるようになった人がほとんどであろうが、理論上はモブと言われる人が何かのきっかけを機にアクセス可能になることもあり得る。

 4才5才から能力を発揮するとなると、努力?かどうかはかなり怪しい。

 この場合には生まれながら、もしくは偶発的なにかをきっかけに発揮したと考えるほうが妥当だろう。

 小説やアニメではよく異世界に転生する話があるが、ゼロ・ポイントフィールド仮説が正しければ引き寄せの性質によって何かの縁があれば途中で途切れたある人物のそれまでのデータが別の幼児に読み込まれる可能はあるだろう。

 臓器移植を機にその人の記憶の一部を読み込むと言った話もありふれたことだが、最初にいったように砂粒もエネルギーの塊でありその振る舞いは量子真空に揺らぎを与えるのだから人体の一部もエネルギー体である以上、関連情報は移植先の人物に読み込まれると考えるべきだろう。

 これも説明がついてしまうのだ。

 

 みなさんが大好きな魔法、地球人類は電気文明を選択してしまったが、古代に別のエネルギーを利用する文明が存在していたとすれば、物質という物質がエネルギーの塊である以上、なんらかの方法で崩壊させることができれば火魔法、風魔法、水魔法、温度もエネルギーなので氷魔法なども可能であろう。


 飛行魔法は要は自分の上より下の空気分子が多ければ浮くのでこれもエネルギー体である以上可能だろう。


 瞬間移動と時間を操る魔法についてはちょっと想像力がついていないが、拙著のAI松浦明石市長の86億4000万回のひとりごと、の薫子編で描いたように光速突破ができれば可能かもしれない。

 また人間の時間感覚を司る脳機能に働きかけることで「観測」レベルで実現することも考えられる。

 ゼロ・ポイントフィールド仮説が正しければ古代文字の解読がある程度できるようになれば、その時代の記録にアクセスすることができるようになり、そう言った魔法的技術の実用化が可能になるかもしれません。


 ゼロ・ポイントフィールドには宇宙が誕生した時からのエネルギーの振る舞いが全て記録されていますので、その膨大な記録にどれだけ広くアクセスできるか。

 それにかかっています。

 繰り返しになりますが、ゼロ・ポイントフィールド阿頼耶識にはホログラム方式でどの一部分にも同時に全知が載っています。

 いわば誰にでも全知を読み解く可能性があり、誰でもラファエル智慧の王になれるのです。

 

 結びとして、智慧、賢さとはもちろん修行や努力で確率をどんどん上げることでアクセス範囲を広げて得ることもでき、努力なしでひょいと手に入れる可能性もあるのです。

 天才という名のゼロ・ポイントフィールドに愛された人間、そういった人間になれる可能性は歳には関係なく誰にでもあるのです。

 

 あなたにも今「降りて」きてませんか?


このゼロ・ポイントフィールドに愛されたフロイラインの小説を描くのに際し、原子力工学の専門課程で博士号を取得後、アメリカの国立研究所を経て、原子力関係の国際学会で委員を務めた経歴をもつ田坂広志教授の著書「死は存在しない」を参考図書としています。

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