第26話:見つからない解決法 ③-1

このような人材を社会復帰させるためには短期療養が必要な疾患では最短でも1年程度、最長でも2年と個人差が大きく、長期療養が必要な病気になると最短でも3年、最長では5年以上と短期療養が必要な疾患よりも長期間社会的戦力を失うことになるのだ。


 例えば、軽度のノイローゼで休職し、復帰時に同じ企業に復職できた場合と退職し、新たな企業で復帰する場合では社会復帰まで1年かかったのちそこから休職当初もしくは復帰以前までに新たに増えた知識やルールなどを休職の場合は再教育および再研修、退職の場合は新たに教育及び研修を受けて集得させて、実際にこれらが使えるようになるまでそれぞれ最短でも1ヶ月から2ヶ月程度かかることから完全な戦力として活躍するには最短でも1年半程度を見込まなくてはいけないということになる。


 そのうえ、現在は休職できる企業と退職が必要な企業があり、前者の場合は同じ職場への復職の望みが出てくるが、後者の場合は同じ職場に復帰することが出来ないため、社会復帰が遅れてしまう可能性がある事や就職可能な企業が療養後にどの程度残っているかの判断が難しくなるため、仮に就労条件が合致したとしてもその企業に就職出来る訳ではないことからこれらが長期化することで本人が更に精神的に追い込まれて精神疾患が再発し、複数の異なる疾患を再罹患という状況にもなりかねないのだ。


 そのため、現在も求職者数に対して就労者数が下回っているのはこのような影響も少なからずあると私は推測している。


 また、近年は“○○卒以上”や“社会経験○年以上”など以前は未経験者を歓迎していた企業が方針転換をしている事からこのような状況に置かれている人の就職の受け皿が減少しているという状況も顕著になってきており、このような人たちの中にも“再就職出来る人”と“再就職出来ない人”がいる事からこの部分をどのようにコントロールするかが今後の課題として考えていかなくてはいけないだろう。


 私はこの問題に関しては“社会的経済循環のバランス”が重要になってくると思うのだ。


 なぜなら、現在は療養休暇という社員に取得することが認められている休暇であっても“給与などは少し減額されるが、一定期間は支給が継続される業種・職種”と“療養休暇に入ったとしても給与等が無給になり、一定期間を過ぎると退職や解雇を宣告されるという業種・職種”など本人が就いている業種や職種によって療養休暇取得時の対応や支援状況が異なっていることから、前者の場合は疾病手当なども企業によっては設けているため、本人が就労不能になったとしてもある程度の期間で症状が快方に向かっている場合には問題ないが、快方に向かうまで長期化している場合には支給終了期限までに新たな支援を受けられるように手続き等を行わないと生活基盤が安定しない可能性や長期間療養が必要になる場合、このような状況にある人の生活習慣が変わってしまうことから社会復帰が遅れてしまうという状況にもつながりかねないのだ。


 一方で後者の場合は療養休暇に入った段階で経済的貧困・困窮が発生する事が想定される可能性や本人が“自分が倒れると家族に迷惑がかかるから無理をしながら仕事を継続しなくてはいけない”という症状が悪化したとしても周囲に迷惑をかけられないという心理が芽生えやすくなることやギリギリまで企業などで働いた結果、長期間就労出来なくなるというリスクも高まってしまう可能性がある。


 そのため、前者に対する給与支給終了後の経済的支援も早急に検討する必要があるが、前者よりも後者に対する経済的な支援を優先的かつ適正に検討し、後者の生活水準を下げることがないようにしなくてはいけないだろう。


 なぜなら、私が最も恐れているのは“経済的貧困・困窮による一家心中”や“就職失敗による自殺”などこれまでも連鎖的に発生している事例が将来的な人材確保に大きく影響を与えてしまう可能性やこのような事例が増加する事で日本社会や日本企業等に対する国際的な信用問題に発展する可能性があるのだ。

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