第16話:人を傷つけることの共通点 ⑦

そのうえ、新たな問題としてはこれらの言動に対するストレスが両親に対してではなく、周囲に向いてしまう可能性があるということだ。


特に受験に慣れていない子どもにとっては受験というイメージが掴みにくいだけでなく、受験をするということに対して未体験・未経験の部分が大きいため、ふとしたことで正しい方向に物事が向かなくなってしまう可能性があるのだ。


だからこそ、このような状況にならないように家庭と学校、学習塾などの外部機関が普段の子供たちの状況を把握し、個々に必要な指導や支援を適宜行っていくことが大事だと思うのだ。


 その理由として、現在は受験をすることが主流になりつつあり、それぞれの受験校のレベルに合わせた学習をする事も大事なのだが、受験準備の段階でストレスが溜まりやすい時期もあり、この時期に人間関係のトラブルやスランプに陥ることも想定され、仮に子どものストレスが強くなってしまった場合にどのように対処するべきか分からなくなることで子どもに対して親からの虐待が発生する事や過度なプレッシャーから親子関係が悪化し、居場所を探そうとすることで周囲とのトラブルが増えることなど一般的には“親が悪い”や“本人が悪い”といわれていることに対してきちんとした連携が取れないと子どもはそのまま悪い方向に進んでしまう可能性がある。


 特に、将来の夢や職業などにおいて”出身校“や”必要資格“は目標を達成するためには重要な部分であり、これらの学校に行けないということで絶望してしまうことで個人が求める結果が得られない、両親が求めた結果が得られないということで家庭内の不和にもつながりかねないのだ。


 現在は学歴も然る事ながら、能力の高さや人脈の広さなど個人の能力を求める傾向が強いため、良い大学を出ていることで社会的地位が高まるということも再び起こり始めているのだろう。


 そのため、子供たちが“これくらい出来て当たり前だよ”という言葉が口癖のようになっていて、授業などで教科書等の問題が出来ないというだけで“何でこんな簡単な問題が出来ないの?”や“これくらい解けて当たり前でしょ”のように自分の能力を基準にして、相手を評価する事で自分の能力に優越感を持たせているということもある。


 これはある程度精神発達が安定し、子どもたちの精神状態のコントロールが出来るようになってから起こっているなら問題ないのだが、精神状態のコントロールがうまく出来ていない時期からこれらの感情が出てきてしまうと今度は言われた側の自己肯定感や自尊心が低下するだけでなく、本人が無意識のうちに“みんなに迷惑をかけているのではないか”や“自分のせいでみんなが嫌な思いをするのではないか”という自責思考が強くなりすぎることで、精神的に追い詰められてしまう可能性がある。


 私はこれらの言動が増加している背景に“受験における出身校イメージの悪化への懸念”や“自らが求めている学習環境のイメージと他者の学習環境に対するイメージのずれ”などの環境的要因と“良い成績を取らなくてはいけない”や“こういう人が社会で求められると両親が言っていたから自分も目指さなくてはいけない”といった自発的要因の社会的影響と社会評価における他者との差別化を図りたいという心理がこれまでは中学生頃から芽生える事が多かったが、現在は生まれた段階で親がこれらの心理を植え付ける傾向が強くなっており、子どもにとっても幼少期から育ってきた環境における価値観形成や判断基準などが“一般的な基準”であるという認識が出来てしまい、これらの時期が早まったことにより子どもたちの成育環境の個人差における他者理解が不十分なまま、集団生活に移行するため、自分が出来ていることを相手が出来ないというだけで不思議に思う可能性や受験を意識した生活を送っていると出来る事が当たり前になってしまうため、他者理解が難しいのではないかと思うのだ。

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