第25話:見つからない解決法 ③

 現在はこのような越権行為や虚偽記載によるトラブルや離職が発生件数は少ないが、発生している状況が続いている。


 例えば、“内勤総合職といった内勤ではあるが、職務内容を指定しない職種で応募しているにもかかわらず、実際には人手不足という理由でいずれにも該当しない外勤の現場業務に就かされた“という応募職種と実際の配属職種が一致しないや”営業職と書かれていたのに実際は営業職のクレーム処理センターのような場所に配属された“という応募職種は一致しても実際の業務内容が異なっている・”正社員と書いてあったのに実際は契約社員や派遣社員“という記載されている雇用形態と実際の雇用形態が異なっているなど事例を照会すると相当数の情報が出てくる。


 これは日本の雇用や就労に関しては個人が主導ではなく、企業が主導になっているということを表しているだけでなく、このような行為を繰り返している企業は“働けることに対して感謝して欲しい”というスタンスなのだろうと推測してしまうし、実際にネット社会になりつつある昨今はこのような実情がネット上に出てしまうことで求職者や学生がその企業や業界に対して不信感を持つ可能性もあるのだ。


 この問題は以前から指摘されていたことではあるが、なかなか改善されないことや省庁や行政が介入することになると問題がエスカレートしかねないと判断した上で企業の判断もしくはハローワーク等の求人取扱機関の判断に委ねているのだろう。


 しかし、現在も虚偽の求人内容であっても必要な調査や過去の労働基準監督署等が受理した違反行為等の紹介を行わず、求人票受理や掲載許可を出すなど対策が不十分のままになっているケースが現在もあとを絶たず、転職や社会復帰を望んでいる人にとっては“1日も早く転職したい”や“1日も早く働き始めたい”という心理状態になっていることや求人票の内容に関してはハローワークで受理する際にきちんと審査されて、承認されていると思っているため、過去にそのような事があった人以外は基本的には気にしていないというのが現状だろう。


 そのため、このような体験・経験のない求職者は問題ないが、このような体験・経験がある求職者にとっては“求人情報を信用して良いのか”・“今度は大丈夫なのだろうか”という同じ状況にならないか心配になってくるということも考えられるのだ。


 私も実際に求人情報を信じて応募して、面接の際に求人票に記載のない話しが出てきたこと、出社後に職種が一方的に変わっていたことなどあらゆる経験をしてきたが、これは“本人の就労意欲を1つの違法行為で低下させてしまうこと”や“景品表示法や労働衛生法など情報掲載等に関する法律に抵触する可能性があること”など相手が泣き寝入りすることでこれらの問題がうやむやになってしまうという個人にとっては就労機会を奪われることになるが、このような行為を日常的に行っている企業にとっては“自分たちの都合の良い人材を採用して、都合よく使おう”という社会的立場の濫用や社員を“企業利益のための道具”という捉え方をしているのではないかと思われても致し方ないと思うのだ。


仮に安定的な人材確保や優秀な人材を確保したいと考えているのなら、この実情を把握し、これらの慢性的な行為が行えている状況を変えないと企業における人材の定着を目指すことは難しいと思うし、このような行為によって一生懸命転職活動した人や社会復帰のために頑張った人が傷つくだけでなく、精神的に追い詰められて精神疾患を発症し、長期にわたって就労不能の状態になる可能性もある。


 実際に精神疾患を罹患し、休職や療休などで長期休暇を取らなくてはいけない人材が増加していることで、必要な人手を確保出来ず、社会における人材不足や人手不足が深刻化している背景としても十分に考えられるのだ。

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