第14話:人を傷つけることの共通点 ⑤

 そして、低学年で発生するいじめと高学年で発生するいじめも内容は類似しているが、目的が異なっている事が多く、これらの要因に対してきちんとした指導をしたとしても効果が出ない可能性が高いのだ。


 例えば、小学校低学年は“人間関係”や“価値観の違い”といった相互理解が進んでいない状況からお互いに言い合いになる事や手が出てしまう状況が増えている場合に“相手を理解してあげなさい”という自分が悪いかのような解釈を持たせようとする人が多いが、これでは“理不尽なことを言われたとしても自分は我慢をしなくてはいけない”という心理につながりやすく、再び同じような状況になった場合に問題が不可視化されるだけでなく、トラブルが起きたとしても相手を庇うような言動が増えてしまう事になる。


これは一見すると成長しているのではないかと思えるのだが、場合によってはこれらの状況が悪化する可能性も十分に考えられるのだ。


 そして、低学年の場合は子ども同士の関係よりも親同士の関係やトラブルに発展しないようにケアをしなくてはいけないだろう。


 その理由として、低学年の場合は子どもが起こした問題をきちんと理解させて、次の問題行動を防ぐというのを基本指導方針として念頭に置くことも必要なのだが、低学年の場合は親のケアをしないと今度は子どもたちの人間関係に干渉するもしくは一方の親が一方の子どもの家に押しかけてトラブルになるという事態になりかねないのだ。


 今はいじめの概念も以前と比べるとかなり敏感になっており、自分の子どもがいじめに遭っているというだけで周囲からの印象が悪くなることや親に対して周囲から攻撃される可能性が高まるなど“親のプライド”と“社会のプライド”がぶつかったときに取り返しの付かない事態に発展し、トラブルが不特定多数の人の目に触れることになることで1つのきっかけが子どもたちの精神発達に影響が出る可能性がある。


 しかし、現時点ではこのような情報は個人情報として扱われるため、事件の真相が第三者の耳に入ることはほとんどない。


 ただ、現在はSNSなどのインターネットが発達しており、関係者の耳に入った時点で噂や又聞きに尾ひれが付いて、ネット上に真偽不明の情報が出てくることや聞いた情報だけで情報を出すことでその情報に対して憶測やデマなど見た人に対して悪印象を与える情報に変わってしまう可能性があるのだ。


 これが高学年になると低学年に比べて1つのイメージで全てが決まってしまう状況になることも多く、場合によっては“裁判”や“損害賠償”のような法的措置を執るという事態にもなりかねない。


 そして、高学年になると将来の夢を見据えた“受験”や“習い事”をする子どもが増えてくるため、低学年よりも自己防衛に対する意識が高くなる可能性があるのだ。


 現在、公立小学校に通っている児童の中には高学年になると私立校を受験する“受験組”とそのまま公立中学校へ進学する“エスカレーター組”に分かれる。


 そのため、前者が多いクラスは2学期の後半頃から空気がピリピリする傾向があり、トラブルなどを起こされて自分自身の受験の際に自分の印象を悪くされないように学校と家庭が連携して本人たちを守ろうとする傾向がある。

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