第22話:人を傷つけることの共通点 ⑬
そして、これらの判断において最も難しいといわれているのが“学生数の減少による人材獲得競争の激化”という観点だ。
これは企業側が採用基準や採用枠に対して最低採用数を決める際に必ず起こる議論として“○○大学の学生は必ず○名以上は採用したい”という企業としての人材基準に対する方針を決定した上で採用活動を行う企業が多く、有名大学や難関大学から人材を採用したいと思ったときに難しい判断を迫られる事も少なくない。
その理由として、大手企業と中小企業は面接などの採用活動開始のタイミングが異なっている事から、大企業や大手企業が採用を予定している大学に人事部長などが出向いて、学生に応募を促すという光景がこれまでも定常化していたが、今後はこれらの応募促進の広報活動に加えて、定期的に大学側とやり取りをして就職を希望する学生がいた場合には“専願”という条件で内々定を出すことや優秀な学生や有名大学卒予定の学生に対してこれまでも“オワハラ”(=就職活動終われハラスメント)などが横行していたが、これからは“カコハラ”(=学生囲い込みハラスメント)により優秀な人材を選別する、優秀な人材を外部に流出させないようにするという行為が増加してくる可能性があり、この部分を文部科学省や厚生労働省などがどのように判断をしていくのか、大学側も適正な就職活動が行われているのかをきちんと監視した上で企業もしくは労働基準監督署と連携を取りながら適正な就職活動になるようにコントロールしていくことが求められていくことになるだろう。
現在は都市部に優秀な学生が集まりやすいのは都市部に自分が求められている企業が多く、地方では自分の能力が活かせないと思っているからだろう。
そのうえ、有名大学の多くも都市部に集中しており、普段から日常的な光景として志望企業のオフィスやビルを見ている事から憧れが日に日に強まっていく事で、本人が“この企業に入社して、活躍したい”と思うようになるのだ。
しかし、このような企業の多くは“学歴重視”や“ブランド重視”といったこれまでの就職活動における採用基準が根強く残っており、全ての大学に通っている学生が入社を希望したとしても企業側が基準として考えている大学以外の学生が入社できる可能性が下がるというのが一般的な就職における現状だろう。
しかし、このような就職観が企業側に出てくる事で優秀な人材を採用出来る確率に企業差が出てくるという事になってしまう。
なぜなら、企業によっては優秀な人材を一定数確保したいと思い、採用を希望している大学などに出向いて、教授等から学生に直接声をかけてもらうように大学側に働きかけを行う事や就職活動支援サイトなどで企業が欲しいと思っている大学に通っている卒業予定の学生にスカウトメールを送るなどあらゆる手を使って人材を確保したいと考えるため、学生によっては複数の企業から1日に数件もスカウトメールが送られてくるということもあるからだ。
これは日本におけるこれまでの就職活動のあり方や学歴序列の考え方が現代においても根強くなっているからだろうと推測することが出来るし、こういう人材を採用する事でその大学に実績を作ることも出来るし、企業にとってもその大学からの将来的な人材確保が可能になるなど双方にとってWin-Winな関係性を保てるという事になるのだ。
そのため、現在求人等で目立つようになった“採用対象校”を指定する、求める能力を限定するなど企業も人材採用における価値観がここ数年で大きく変化しており、中小企業であっても人材採用においては同様のスタンスを取る企業が増加しているという事になる。
この考え方は海外では主流の考え方だが、海外の場合は学歴だけでなく、能力と個性や創造性といった個人が持っている知識や感性も採用基準として捉えられており、これら全てを総合した形で採用や不採用が決まるという事になる。
そのうえ、海外の場合は企業に就職する事を前提として就職活動をする人も多いが、中には企業への就職は第1希望だけど、起業もしくはフリーランスとして働くことが第2希望という企業に就職出来なかったとしても別の道を模索していくという人も近年は増加傾向になっており、これもコロナ渦が作り出した個人の労働観の変化や就労に対する新たな選択肢であると考えられるのだ。
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