第19話:人を傷つけることの共通点 ⑩

その理由として、日本というのは“企業に就職する”というこれまでの一般的なゴールが存在しており、そのゴールである企業から“○○大学卒以上”と求める人物像の最終学歴を求められたのなら、その企業を志望している本人にとっては“自分がそのレベルにならないといけない”という目標意識が芽生えるため、中学校もしくは高等学校から実績のある学校に進学して、難関大学を目指すというルートを選択しないと目標を達成することは出来ない。


 そのため、良い大学に進むためには定員の中に入らないといけないうえに試験を受験し、志望校に合格するにも何十倍という受験倍率を勝ち抜かなくてはいけないため、入学するまでも大変だが、卒業するまでも大変という状態になる。


 ただ、双方で気を付けなくてはいけないのは“記載事項による就職希望者に対する差別や不当行為”だ。


 例えば、Aさんは○○商事が志望企業で、大学での成績は優秀だが、その企業が求める採用基準で“○○大学卒以上”や“○○大学首席卒以上”など当該企業が採用にあたって採用校を指定し、その大学を卒業した人しか採用しない前提で採用活動を行っていた場合にはAさんは入社を諦めなくてはいけなくなる。


 しかし、同じ企業を志望しているBさんは採用基準の大学を卒業予定であり、仮に内定となると当該企業に就職することは可能だが、○○商事は第2志望の企業で、第1志望は海外の外資系企業である事から第1志望の企業から内定を受けた場合にはこの企業にBさんは就職しないことになる。


 これはあくまで企業側が採用者を限定している例だが、このような状態になった場合に難関大学卒業予定者でかつ成績・経歴優秀な人材は海外を拠点にしている企業へと流れていくことになりかねない。


 その理由として、外資系企業は日本企業よりも優秀な人材対する人材評価が高く、仕事量と仕事の成績・実績に対する評価で給与や賞与等が支払われる“相対賃金制”が定着しているため、自分の仕事が企業の業績につながったときの達成感が異なるのだ。


そして、外資系企業の場合は個別評価制度になっていることや上司とのコミュニケーションの中で“こういうことをやってみたい”と言ったとしても、日本企業では“こんな企画無理でしょ”と言われる内容でも外資系企業の場合は“まずやってみよう”というチャレンジさせてくれる環境もあり、実際に体験・経験をする事が出来ることで学生が外資系を目指す背景として考えられる部分なのだ。


このように、日本企業の場合は“自分の立場を守ろう”という年功序列が起きやすいが、外資系企業の場合は“自分の立場を奪ってみてくれ”という自分が作ってきた実績に自信を持っている事で若い社員も“上司の成績を超えてみたい”という向上心が芽生えることになるため、相手を傷つける傾向が強い日本の就職観と相手を傷つけない海外の就職観では後者の方が新卒採用であっても、経験者採用であってもそれぞれの企業に求めるポイントにおいて自分の成長を実感できると感じやすいのだ。

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