第32話:多様な価値観と認識 ②
特に現在は世界では徐々に国民所得の水準が上昇しており、これまでのように海外から安価で高性能な商品を手に入れるという事は容易ではないし、日本企業にこれまで商品を卸してきた海外企業にとっても“卸値を上げたい”という意向をまず示し、そこから“卸値を上げてほしい”という交渉に入るのだが、この段階で日本企業が生き残れるかどうかが決まる重要な段階でもあるのだ。
なぜなら、現在は国際的に企業の方針や価値観が多様化していることや全体的に成長市場になっていることから、企業を買収するにしてもこれまでよりも高額な提示をされることが多く、日本企業にとってはこれまで特定の市場における買収提案を積極的に進めていたとしても決断する事が難しくなっていくという状況も出来てくるため、日本企業の考えている買収ルールや企業間の取引ルールなどと海外企業の考えている買収ルールや企業間の取引ルールに少しずつズレや捉え方に対して開きが出ているように感じるのだ。
これは日本の“資本観”が国際基準に達していないという事や日本国内の認識で海外企業に交渉をするという“企業間序列”によるカンパニーコントロールが行えるという認識が強くなっている事や日本では付き合いが長い企業だと“あと○ヶ月くらいは据え置けるけど、それ以上は無理”という交換条件を提示されたとしても“それなら取引を停止する”という大手企業など資本力がある企業の力が強いため、日本においてはこのような企業価値観を行使したとしても問題がないと思うのだが、海外の場合は日本だけでなく、世界各国から仕事を受注している企業だと高い金額を提示してくれている国や企業からの受注を優先的に行い、そうではない国や企業に対しては後回しでも構わないという考え方に変わってきており、新しい価値観で新たなルールを日本においても作っていかないと日本の孤立が急速に進むことをこれらの状況が意味しているのではないかと思うのだ。
そのうえ、現在はどの国であっても“企業の意向を尊重する”ということが暗黙の了解と同様に世界的に定着している事から、安価な取引に対して拒否されるという事も少なくない。
特に長年取引をしている企業でかつ安価な原価で製造をしてくれていたアジア圏の企業がアメリカやイギリスなどインフレの進む国からの発注が増えることでこれまでのように安価な受注を断り、少しでも高い価格を提示してきている企業と取引をしたいという考えに少しずつ変わっており、この状況を考えると日本企業がこれまで積み重ねてきた関係性や企業間のつながりが薄れ、徐々に世界から孤立するという可能性も否定出来なくなってくるのだ。
これは日本における年功序列型の考え方が少なからず影響している可能性やこれまでの市場に対する価値観や競争力を考えた時に日本がこれらの市場における立ち位置がかなり上位だったことからこれらの考え方をどのように動かし、どのように味方に付けるかを考えるだけで良かったのだが、昨今は海外ではインフレ対策として“物価上昇に耐えられる企業作り”や“企業間のセーフティネットおよび不当な取引の防止に関する法律や企業間協定の整備”など企業のバランスが崩壊しないように社会全体で取り組みを行い、不当なルールで協定を結ばせる行為を禁止するなど企業におけるパワーバランスの強弱による不利益を被らせないようにする動きを止めることが大事というスタンスが1年半前から徐々に加速してきたことから海外においてはインフレ状態になったとしてもあまり大きな混乱は起きていないが、日本国内ではインフレになったことで企業の明暗がくっきりと分かれていることも印象的だ。
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