第8話:虐待の発生 ⑧
仮にこれらの状態に発展し、早急な対処が必要になった場合には生徒指導など抑止力につながる措置を施すか、集団分離を行い、集団から加害児童を離し、環境を安定化させるかの選択が求められるし、被害児童に悪影響が出た時には教職員と家庭が連携する形でメンタルフォローが早急に開始出来る体制構築求める必要があるだろう。
しかし、このような体制構築に関しても難しい反面がある。
まず“虐待心理の定着”だ。
これは幼少期から虐待等を受けてきた子どもにとっては“自分が親の考え方と違う事をしたときに、親から暴力を受けていた”という実際の体験・経験から“考えが違う=力で抑えて良い”という誤った考え方が潜在的に脳内にインプットされている可能性があり、この事が集団生活における相互理解を進める際の弊害につながりやすい。
そして、実際に暴力を受けてきたことで本人は人を傷つけることに対して罪悪感を持っていないことも多く、無意識のうちに相手に対して身体的・言語的暴力など相手を威圧することで相手を傷つけることや強奪や隠蔽などといった相手の物品を意図的に盗む、隠すという行動を取ることも私は“虐待等の後遺症”に近い行動心理だと思う。
これらの行動を抑止するためには本人の心の中にある傷を軽減させることや危害を加えないコミュニケーション指導等の徹底と共有をクラスで図ること、きちんと悩み等を相談出来るように学校内だけでなく、外部との連携を強化するなど親から受けてきた暴力が正当化されない、精神発達の過程で誤った選択をしないようにカウンセリング等の定期的な実施やカウンセラーと担任が情報を共有し、これらの情報を基に個別指導計画や校医と連携し、医療カウンセリングと“認知療法”などのその子どもに必要な治療法を模索し、現在の判断方法を柔軟にすることと他者の判断方法の違いを知る事など本人の精神発達に合わせたサポート体制を整えながら社会との乖離を少しずつ緩和させていくことが必要なのだが、問題としてこのような子どもたちは自分が虐待されていたということを第三者に対して話すことに抵抗を持っている事やその話をさせることで常にフラッシュバックしているような状態になり、突発的な過呼吸を起こす可能性やパニックを起こして自傷行為が始まる可能性もあるため、慎重にならなくてはいけない部分が多く、小学校高学年になると体格も精神発達もかなり進んでいる傾向が顕著になることで対応がかなり難しくなることも予想される。
そして、4年生を超えると今度は“虐待”が“家庭内暴力”に変わる可能性やこれまで暴力が中心だったものが身体の発達等に伴い精神的な虐待や心理的な虐待にも発展するという可能性もあり、虐待心理が完全に抜けるまでにはかなりの時間を要することになる。
また、精神的・心理的な虐待を受けた子どもは受けている虐待のレベルにもよるが男性不信・女性不信・特定不信など社会生活に支障が出ることや人間関係に関しても本人たちが自己形成することがかなり難しくなる事で社会的孤立に追い込まれることもある。
しかしながら、日本においてはこれらの状態になる前に保護することが難しいだけでなく、実際にこれらの状況が発生し、本人が一定以上の状態になってからでないと対応が出来ないという状況や児童相談所などの公的機関が“これ以上の同居は危険”という判断を下さないと強制保護できないなど法律の壁や養育権などの個人が法律で認められている権利の壁が発生している問題との間に大きな壁として立ちはだかっていることになり、これらの関連法律が改正される、修正されるという話題を最近は聞かないし、仮に検討されたとしても実行するには複数の法律が関係しているかなり難しい問題をクリアしなくてはいけないなど実行する前段階で長期にわたる議論を行い、そこで出たアイディアや制度を多角的に検証や社会実験等を行い社会的効果や費用対効果などを可視化した上で実施するか見送るかを決めることになるのだ。
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