第29話:見つからない解決法 ⑦

なぜなら、人を傷つける行為は意図的かつ意識的に行う場合と何のきっかけもなく、発生する場合に分かれるため、前者の場合は行為に至る前のプロセスや行動状況、人間関係の変化などその人と周囲との関係性から前兆や予兆が見える事もあるため、第三者は備えやすいのだが、後者の場合は家庭内や友人間など狭い範囲で問題が発生したことで、その際に発生したストレスと同じもしくは類似する状況が第三者と関わる際に発生する事でこれらの行為に発展するという事も少なくない。


そのうえ、人を傷つける行為に対して幼少期から喧嘩をしている子どもとそうではない子どもで導入部分が異なっている事や発生過程におけるきっかけとして認められる部分とそうではない部分が見えてくることもあまりないため、外見だけ、状況だけで判断することがかなり難しいだけでなく、後者の場合は問題がいきなり発生する事からこれらの問題に対して大人や周囲が対処することはかなり困難に近いのだ。


 特に幼少期から虐待全般やネグレクト(=育児放棄)といった本人の精神発達を正常に行える状態ではない発育過程を経ている子どもにとっては人とのコミュニケーションを取るきっかけを自ら作ることが難しい事や認知矯正を行わないと親の行動を正当化してしまう可能性もあるため、最終的な判断をする際に“気に食わないなら暴力を振るってもいい”・“相手にやられそうになった時は武器を使ってもいい”という幼少期から見てきた親の行動と今の状況をクロスイメージさせた際に選択しやすい状態になるともいわれている。


 そのため、所属集団やコミュニティにおいて“価値観の違う人を認める”という行為がうまくいかない、この行為を含めた一般的に求められる行為に対してうまくいかないという社会とのミスマッチが発生する可能性もある。


 その時に正しい指導を本人に対して行う事や本人の行為がなぜいけないのかを理解させなくてはいけないのだが、元々暴力等で従うように育てられてきている場合には“相手に対して暴力や威嚇など相手に危害を加えることが正しい”と認識していることが多く、それが間違いである事を認識させるには時間がかかることや幼少期から“喧嘩両成敗”や“正当復讐”のように相手がやってきているのだから自分もやる権利があるという認識が芽生えやすい環境で育つこともあるため、なかなか社会的なルールを認めさせることが難しいのだ。


 今は家族の形も以前に比べると多様化しており、これらの状況を考えた時に形が多様化した分だけ新たな価値観が出てくる事になるのだが、このような状態になったときにすぐに対応できないという状況が出来上がってしまっているという事も社会的懸念事項としてそれぞれの立場で考える事が必要になると思っているが、難しいのは“連鎖心理”という親から子もしくは夫から妻、義理の父親もしくは母親から夫もしくは妻など立場が上の人から下の人に対してこれらの行為が行われることで無意識のうちに子どもに対して同じ行為を繰り返してしまうという潜在反応が発生する事で虐待やネグレクトとは違った形で子どもたちに伝わってしまうことでこの行動が学校などでのいじめやトラブルの発生のきっかけになることや親からやられたことを子どもたちが真似をすることで周囲からの本人に対する評価が変わってしまうため、今度は子どもたちがストレスを感じやすくなり、そのストレスを発散するために同級生などに危害を加えるという連鎖心理が発生する可能性もあるのだ。


 しかし、この心理が連鎖的に発生する事は1人の行動がきっかけになるわけではなく、周囲に同じ境遇の子どもたちがいた場合に集団で特定の人に対して攻撃していくという可能性が高まっていくことになるが、これらの心理としては集団心理というよりも自己防衛心理といった方が正しいかもしれない。

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