第155話 春の月70日/エリナ・グレニーはクッキーを錬金するのを諦めて飴細工を錬金することにする
エリナは図書室の椅子に座り、手にしていた『甘いお菓子の錬金レシピ』を開いた。
「あっ。クッキーが作れるみたい」
エリナは目次を見てそう言いながら、クッキーのページを開いた。
クッキーは、母親と作ったことがある。
エリナはクッキーの錬金材料を見て眉をひそめた。
「これ、なんて読むの? 薄、力、粉? クッキーを作るのに要るのは小麦粉じゃないの?」
『薄力粉』の意味がわからなかったエリナはクッキーを作るのを諦めた。
次にエリナが注目したのは『飴細工』だ。
「飴を作れるの? 飴って砂糖があればできるかな?」
エリナはそう呟いて『飴細工』の錬金レシピを確認する。
錬金レシピ名 飴細工
錬金ランク G
錬金素材 砂糖/水(適量)
① 飴細工に仕上げたい文字や絵を描いた紙を用意する
② ①で用意した紙と適量の砂糖と水を入れる
②錬金窯に魔力(適量)を注ぎ、完成
※ 錬金が成功したら『飴細工に仕上げたい文字や絵を描いた紙』は消滅する。
水が足りない場合は『飴細工に仕上げたい文字や絵を描いた紙』が赤くなり、砂糖が足りない場合は『飴細工に仕上げたい文字や絵を描いた紙』が黄色くなる。
水や砂糖が多すぎる場合は錬金が成功する。
「説明が大雑把だなあ。たくさん砂糖を入れて、たくさん水を入れたら絶対に成功するっていうことなのかな」
エリナはそう呟いて、自分の両目と両耳に魔力を注いで周囲を見回す。エリナの周りには3人の小人がいた。
少女の小人、少年の小人、老人の小人だ。いつも仲良くしているトトはいない。
「ねえ。砂糖って厨房に行けばもらえる?」
「さとう、あげる」
「いいよー」
「あめざいく、ほしい」
少女の小人と少年の小人はエリナにあっさりと砂糖をくれると言い、老人の小人は飴細工をねだった。
老人の小人が飴細工をねだると、少女の小人と少年の小人も飴細工が欲しいと騒ぎ出した。
エリナは友人の分の飴細工が終わった後で良ければ錬金すると約束した。
エリナはニナから貰った『錬金手帳』を『収納の小袋』の中から取り出して『飴細工』の錬金レシピが記載されているのを確認する。
その後、友人たちへの飴細工の絵を5枚書き、それから小人たちと一緒に図書室を出て厨房に向かった。
厨房に到着したエリナは砂糖を貰い、それから井戸に向かった。
井戸で水を汲み『収納の小袋』から取り出した錬金窯に注ぐ。
「たくさん水を入れた方がいいよね」
エリナはそう呟いて、木桶で5回水を汲み、錬金窯に入れた。
「砂糖も多めに入れた方がいいのかもしれないけど、でも、入れすぎちゃったらもったいないよね……」
平民で、実家は食堂を経営しているエリナは砂糖を適量以上に入れることをためらった。
「とりあえず少しずつ砂糖を入れよう。砂糖が足りなかったら『飴細工に仕上げたい文字や絵を描いた紙』が黄色くなるからわかるよね」
エリナは砂糖を入れた後、レンのための飴細工を描いた絵を錬金窯に入れた。
そしてガラス棒に魔力を注ぎながら錬金窯をかき回す。
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