第149話 春の月70日/エリナ・グレニーは皆で『粘土』を錬金したい
春の月70日になった。
『白紫の錬金学院』を退学することになった生徒たちは5日ごとにコルム島に寄港する船に乗って島を出て行った。
『白紫の錬金学院』入学一期生は31名から14名に減った。
エリナはレンとナイジェル、セーラ、ロレッタと昼食を食べ終え、広々として見える食堂を見渡した。
生徒の数が減ったから、食堂が余計に広く見えるのかもしれない。
「でも、セーラの国の王女様も卒業しちゃったのは意外だよねえ」
食堂を見渡したエリナは、セーラに視線を向けて言った。今、生徒たちは二つのグループに分かれて食事をしている。
「そうね。でも、ジェニファー王女殿下に婚姻の話が出たのなら、そちらを優先しなくては」
ジェニファー王女はセーラの母国でる西方諸島連合国の第三王女だ。
第三王女なので王位継承権の順位は低く、立場が弱い。
セーラがジェニファー王女から聞いた話によると、国王は『収納の小袋』の錬金ができれば『錬金術師』として十分な価値があると判断したらしい。
ジェニファー王女は錬金について深く学び、錬金術師としての価値を高めて母国で過ごす時間をなるべく長く獲得したかったと言っていた。
「わたし、貧乏な子爵家は苦労が多いと思っていたけれど、高貴な方も思い通りにならないことが多いのね」
セーラの言葉を聞いたロレッタが言う。友達のオリヴィア・ウィリアムズ侯爵家令嬢が皇太子殿下から一方的に婚約を解消をされた時も憤ったものだが。
「午後は何をする? また『魔力循環』を教える練習をする?」
エリナはテーブルを囲む友達の顔を見回して問いかける。実を言うと、エリナは『魔力循環』を教える練習に飽きてしまっている。
「最近は『魔力循環』を教える練習ばかりしていたから、午後からは久しぶりに錬金をする?」
「私、錬金したいですっ」
ナイジェルの提案に、エリナは勢いよく賛成した。
「俺も、久しぶりに錬金をしたいです」
レンがそう言うと、セーラとロレッタも肯いた。
ナイジェルはテーブルを囲む全員の意志を確認した後、エリナに視線を向ける。
「エリナ嬢は何か錬金したい物があるの?」
ナイジェルに問いかけられたエリナは肯き、口を開く。
「私『粘土』を錬金したいですっ。皆で、粘土で遊びましょうっ」
エリナ以外の全員は、エリナの言葉を聞いて驚いた。
「エリナ。粘土で遊ぶの? 詩を書いて遊んでいた生徒が退学処分になったのに」
セーラはエリナの言葉に呆れて言う。
「セーラ。それは錬金しないで遊んでいたからダメだったんだよ。錬金して、ちょっと遊ぶのはいいと思う。私、錬金した『羽ペン』でお絵かきしたけど退学になってないもの」
エリナはセーラの言葉に反論した。
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