第113話 春の月67日/エリナ・グレニーたちはシリルに『助手』について教わる

「今日は、朝ご飯を食べたら何をしますか? 図書室で『赤紫まだら蛇』と『リィーンバード』の素材を使った錬金アイテムを調べてみます?」


エリナは小皿に取り分けたサラダと燻製肉を食べ終えて、紅茶を飲んでいるレンとナイジェルに問いかけた。

セーラは全員分のパンとスープを取りに行っている。

レンはエリナに視線を向けて口を開いた。


「エリナは『リィーンバード』の羽を使って枕を作るのかと思っていた」


エリナはレンの言葉を聞いて苦笑し、口を開く。


「枕、作ってみたいけど、今は枕や枕カバーを作れるほど布とか持ってないし、部屋で使っている枕もあるから。でも、解体した素材を使うなら、羽は綺麗に洗って乾かさないといけないし、皮は鞣さないとダメだよね」


「錬金術で、素材を整えることはできないだろうか」


「できるよ」


ナイジェルの呟きに答えたのは、錬金術師ニナ・スブラッティの弟子のシリルだ。

シリルは空の食器を乗せたトレイを持っている。彼は食器を片づける途中でエリナたちのテーブルに寄ったのだ。


「でも、素材を錬金術に適した状態にするのは助手たちに任せた方がいいと思う」


「助手?」


エリナはシリルの言葉に首を傾げる。シリルはエリナに微笑んで口を開いた。


「そう、助手。エリナたちはもう出会ってるよね。目に魔力を巡らせると今見えないものが見えるはずだよ」


シリルはそう言い終えると、トレイを片付けに行ってしまった。

シリルと入れ替わるように、セーラは全員分のパンとスープを取りに行っていたセーラが戻って来る。


「助手っていうのは」


「エリナ嬢。ここで話すのはやめよう」


エリナの言葉を遮ってナイジェルが言う。

ナイジェルに制止されたエリナは口を閉じて肯く。

周囲の様子を窺うと、食堂にいる生徒の数人は、エリナたちの会話に耳をそばだてているようだ。


「部屋で話せたらいいが、女子寮には俺とナイジェル様は入れないし、男子寮にはエリナとセーラ嬢が入れないな」


「解体場は? それなら皆で行けるよね?」


エリナが自分の思いつきを口にすると、エリナの髪が一回引っ張られた。どうやら『見えない誰か』が一緒に話を聞いていて、解体場を使わせてくれるようだ。


「解体場、使っていいって」


「何の話?」


シリルの話を聞いていなかったセーラがエリナに問いかけた。

エリナはシリルに聞いた話をセーラに伝える。


「エリナ。解体場って、あたしも行っていいの?」


「いいと思うよ。まさか、セーラだけ仲間外れなんて、意地悪なことしないよ」


エリナの言葉にレンとナイジェルが肯き、それからエリナの髪が一回引っ張られた。全員、セーラが解体場に行くことに賛成したようだ。


「パンを食べてスープを飲んで、片づけ終わったら解体場に行こう」


レンの言葉にナイジェルが肯き、皆の前にスープのカップとパンが乗った皿を配ってくれているセーラに微笑んだ。


「セーラ嬢、スープとパンをありがとう」


ナイジェルに続いてレンとエリナがセーラにお礼を言う。そして、皆で食事を始めた。

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