第64話 エリナ・グレニーは女子寮の自室で寝過ごしてセーラに起こされる

レンやナイジェルと別れたエリナは女子寮の自室に戻ると、部屋にセーラはいなかった。


「疲れた。眠い……」


早朝に起きて『白紫の錬金学院』からコルム島北の森まで歩き通して疲れた。

エリナは自分のベッドに潜り込み、少し眠ることにした……。


「エリナ、起きて」


……身体を揺すられ、エリナは目を開けた。


「セーラ……?」


「食堂でレン様とナイジェル様が待っているわよ。会う約束をしているんでしょう?」


「私、寝すぎちゃった!?」


慌てて飛び起き、ベッドを出たエリナを呆れたように見て、セーラがため息を吐く。


「エリナ。髪に寝癖がついているし、服も皺になっているわ。着替えて、髪を梳かして食堂に行くのよ。淑女らしくね」


「でも、レンとナイジェル様が待ってるのに……っ」


「レンとナイジェル様には、あたしが知らせに行ってあげる。エリナは身支度を整えてから食堂に来るのよ」


セーラはエリナにそう言って部屋を出て行った。

一人になったエリナは、セーラに言われた通りに着替えて髪を梳かして身支度を整え、走って食堂に向かう。


息を切らし、食堂に到着したエリナはレンとナイジェルの姿を探す。


「エリナ……!!」


レンが席を立ち、エリナに手を振る。エリナはレンとナイジェル、セーラが座っているテーブルに駆け寄った。


「レン、ナイジェル様。遅くなってごめんなさい……!!」


エリナはレンとナイジェルに、勢いよく頭を下げて謝った。

レンは椅子に座り、頭を下げるエリナに微笑む。


「セーラ嬢から事情は聞いた。謝らなくていい、エリナ」


「エリナ嬢。お腹が空いているだろう? 料理を取ってくるといいよ」


ナイジェルも優しい口調でエリナに言う。


「ありがとう、レン、ナイジェル様」


エリナは二人の優しさに感謝して、自分の分の料理を取りに向かった。


料理を取って来たエリナが晩ご飯を食べている間、レンとナイジェルはセーラに今日、コルム島北の森に向かった時のことや、『フェアリーサークル』の話をした。

セーラは『フェアリーサークル』の話を聞いて、目を輝かせる。


「『フェアリーサークル』を自由に使えるようになれば、長い距離を一瞬で移動することができるのですね。画期的なことです……っ。まさか『白紫の錬金学院』の学舎の二階に、そんな便利で素晴らしいものがあるとは思いませんでした……っ」


「『フェアリーサークル』を使えば、コルム島北の森に、すぐに移動できる。今日の疲れも残っているし、明日は昼の12:00頃、昼食を終えて出発しようか」


「でも、ナイジェル様。その時間だと鈴白草が生えているコルム島北の森の中央部にはたどり着けないのでは……?」


ナイジェル様の言葉を聞いたレンは疑問を口にする。エリナは口の中のスクランブルエッグを咀嚼しながら肯いた。


「明日はコルム島北の森の入り口付近を探索してみよう。俺が図書室で、コルム島北の森の入り口付近の植生を調べておくよ」


「俺も付き合います」


ナイジェル様の言葉を聞いたレンが言う。


「私も……」


「エリナは休んでいて。明日の昼の12:00頃、食堂で待ち合わせしよう」


エリナはレンの言葉に肯く。

昼に待ち合わせをするのであれば、たぶん寝過ごすことはないだろう。


「エリナ。あたしと一緒にお昼、食堂に行きましょう。懐中時計があるから、時間を教えてあげる」


「ありがとう、セーラ。……私も時計、欲しいなあ」


田舎町ディーンで暮らしていた頃のエリナは、明確に時間を決めて待ち合わせをしたことがなかったので、特に時計は必要なかった。

でも、懐中時計を持っているレンやナイジェルと一緒に行動している今、切実に時計が欲しい。

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