第74話 エリナ・グレニーたちは食堂で『錬金術師 Gランク』の卒業証明カードの説明を聞く
「『白紫の錬金学院』の卒業を希望する生徒は、私かシリルに卒業希望ということを伝えてください。期限は今日の夜7:00までよ。卒業希望者には『錬金術師 Gランク』の卒業証明カードを配布します。
『錬金術師 Gランク』というのは『自分の錬金窯を持ち、錬金を1回以上成功させたことがある錬金術師』のことよ。『錬金術師 Gランク』の卒業証明カードと金貨10枚があれば『白紫の錬金学院』への再入学を認めます」
エリナは『金貨10枚』という言葉に驚いて目を見開く。
そんなの、このまま『白紫の錬金学院』で学び続けた方がいいに決まっている。だって、学費も食費も無料で学べるのだから。
「それから錬金したアイテムを掬う『錬金柄杓』や錬金に必要なアイテムを、学舎二階の『Ⅱ-4』教室で販売・貸与します。必要な生徒は利用してください。話は以上です。卒業希望の生徒は私のところに来てちょうだい。シリルのところでもいいわ」
『錬金術師 Gランク』の卒業証明カードを欲しがる生徒は誰もいないというエリナの予想に反して、女子生徒4名が席を立ち、ニナの元に向かう。
「オリヴィア・ウィリアムズ侯爵令嬢も卒業希望か。これで、エリナは安心できるな」
レンはニナの前に並ぶ女子生徒の列を見ながら言う。
「私、まだ錬金のことが全然わからない状態で、無料でたくさん学べるかもしれないのに卒業したいと思う生徒がいるなんて思わなかった」
エリナはニナの前に並ぶ女子生徒の列を見つめて言った。
オリヴィアは列に並んでいるが、オリヴィアといつも一緒にいるロレッタ・デヴァイン子爵令嬢は列に並んでいない。
ロレッタは『白紫の錬金学院』で学び続けることを選んだようだ。
「貴族令嬢は『結婚』することが最終的な目的で、仕事をすることはあまり無いからね」
「えっ!? 仕事しないで、どうやってご飯を食べるんですか……っ!?」
ナイジェルの説明を聞いたエリナは驚いた。
エリナの言葉を聞いたナイジェルはレンと視線を合わせて苦笑する。
「平民の女性は、そういう間隔なんだね。エリナ嬢と話すと視野が広がるよ」
「婚姻で家同士を繋ぎ、血を残す貴族令嬢の役目も大事なものだと思うけれど、エリナには理解しづらいことかもしれない」
「レン。『こんいん』ってどういう意味?」
「『婚姻』は『結婚する』という意味だよ」
「『家を繋ぐ』っていうのは、好きな人同士が結婚して、家族が増えるっていうこと?」
エリナに問いかけられたレンは言葉に詰まる。
貴族としての教育を受けて来たレンは政略結婚の概念を理解しているが、平民のエリナに説明する言葉を見つけられない。
「貴族と平民は、結婚に対する考え方が違うんだよ」
困惑して沈黙するレンに代わってナイジェルがそう言うと、セーラも肯く。
セーラは平民の考えも貴族の思考も理解できるが、それを今、エリナに説明しようとは思わなかった。
平民として暮らして来たエリナに理解できないと思うから。
「エリナ。レン様とナイジェル様に布を切って作った目印を確認してもらったら?」
セーラはエリナに新たな話題を提供する。エリナは素直に肯いて『収納の小袋』からレンとナイジェルの分の布を取り出した。
「木に結んで目印にする布は、こんな感じでいいですか? 私の分は、私の魔力を込めています。これでよかったら、レンとナイジェル様で分けて、魔力を注いでください」
「わかった。ありがとう、エリナ。セーラ嬢も、布を提供して頂き、感謝します」
「こちらこそ、今日はどうぞよろしくお願いします」
会釈をしたレンに、セーラも会釈を返す。
いつの間にか、ニナは食堂を出てしまったようだ。食堂内にいる生徒はそれぞれ、朝食を食べたり話をしたりしている。
エリナたちも、朝食を食べることにした。
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