第131話 春の月67日/エリナ・グレニーたちは『羽ペン』を錬金する
エリナは錬金窯の中から万年筆を取り出した。
最初に錬金した『収納の小袋』のように、万年筆はエリナの手で取り出すことができた。
「何がダメだったのかなあ……?」
エリナは取り出した万年筆を様々な角度から眺める。錬金材料にした万年筆と、何も変わらないように見える。
『羽ペン』の錬金方法は『羽と筆記用具を同数錬金窯に入れる』『魔力を込めて練り上げる』という二つだけだし、錬金終了後に錬金窯からは光が溢れたので錬金が失敗したことに納得がいかない。
「エリナ、どうした?」
自分が錬金した万年筆を手にしたレンが、難しい顔をして万年筆を睨んでいるエリナを見とがめて尋ねる。
エリナはレンと視線を合わせて口を開いた。
「レン。私『羽ペン』の錬金に失敗したかもしれない。だって、万年筆、全然形が変わってないの」
「俺も万年筆の形は全然変わっていないが、一緒に錬金窯に入れた『リィーンバード』の羽がなくなっているなら錬金は成功していると思う。『収納の小袋』を錬金した時も小袋の形は変わらなかっただろう?」
「確かにレンの言う通りかも」
エリナは手の中にある万年筆が『羽ペン』になっているかもしれないと思いながら見つめる。
ナイジェルは錬金した『羽ペン』に魔力を注いだ。赤い万年筆を素材に錬金した『羽ペン』の色が、魔力を注いだことで青色に変わる。
「あおになった!!」
トトはナイジェルの『羽ペン』が青色に変わったのを見てはしゃいで手を叩いた。
エリナとレンはナイジェルの『羽ペン』の色が魔力を注いで青色に変わったのを見て、自分たちも『羽ペン』に魔力を注ぎ始めた。
エリナは完全に青色に変わった『羽ペン』を見つめながら『はじめて作る錬金アイテム』という本に載っていた『羽ペン』の説明を思い浮かべる。
錬金アイテム 羽ペン
羽ペンは羽と筆記用具を使って錬金した錬金アイテムで、魔力を込めればインクをつけなくても書けるペンである。
羽ペンは手を離すと宙に浮き、空間に文字や絵を書くこともできる。
「『羽ペン』は手を離すと宙に浮く」
エリナはそう呟いて、手に持っている『羽ペン』を放り投げた。
『羽ペン』は床に落ちることなく、空中に浮かんでいる。
空中に浮かぶ『羽ペン』を見て、トトが大喜びして飛び跳ねた。
「『羽ペン』は『空間に文字や絵を書くこともできる』」
レンはそう呟いて『羽ペン』で空中に自分の名前を書いた。
レンが書いた『レン・クリプトン』という文字は白い光を放つ。
「紙が無くても言伝ができるのは便利だね。でも、文字を消す時はどうするんだろう?」
レンが書いた文字を見つめていたナイジェルが疑問を口にする。レンは書いた文字を手でこすった。だが、文字は消えず、そのまま空中に残っている。
「書いても消せないのは困るね」
エリナはそう言いながら眉をひそめ、ため息を吐く。ずっと両目と両耳に魔力を注ぎながら、錬金でも錬金窯に魔力を注いだので身体が怠い。
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