第41話 エリナ・グレニーはレンを責めるロレッタ・デヴァイン子爵令嬢に困惑する
エリナとレンがお互いに自己紹介を終えた直後、エリナたちのテーブルにロレッタ・デヴァイン子爵令嬢が現れた。
ロレッタは、エリナの頬を叩いたオリヴィア・ウィリアムズ侯爵令嬢と仲が良い女子生徒で、エリナとオリヴィアが諍いを起こした際、和解に至るまでの間に、平民のエリナのことを『エリナ様』と呼ぶようになった。
エリナはロレッタのことは嫌いではないが、オリヴィアのことは嫌いなので、なるべくロレッタと一緒にいたくないと思う。
「エリナ様!! なぜ、そのような男と一緒にいらっしゃるの……っ!?」
ロレッタはエリナとレンの顔を見比べて叫んだ。
また、理不尽な難癖をつけられるのかとエリナはうんざりする。
だが、エリナより激烈な反応を見せたのはレンだった。
「ロレッタ・デヴァイン子爵令嬢、無礼な物言いをするな。謝罪を要求する」
エリナに見せていた柔らかいレンの表情が、皇室で不愛想なものに一変したのを見て、エリナは驚いた。
気弱そうなロレッタが、レンを睨みつけているのも怖い。
「エリナ様。この男は、オリヴィア様から婚約者を奪った女の従兄弟ですわっ。気安く話すのは宜しくないわ」
ロレッタの言葉を聞いたエリナは、首を傾げて口を開いた。
「レンがオリヴィア様のこんやくしゃを奪ったわけじゃないんですよね? だったら怒ることはないんじゃないですか?」
エリナの言葉を聞いたロレッタもレンも、目を丸くする。
「ロレッタ、食事にしましょう。下賤な者に関わったら、ろくなことにならないわ」
ロレッタから少し離れたところに立っていたオリヴィア・ウィリアムズ侯爵家令嬢が、沈黙が支配した場に割り込む。
食堂は静まり返り、食事をしている生徒たちはロレッタとレンの言い合いに耳を傾けていた。
エリナはオリヴィアの『下賤な者』という言葉を腹立たしく感じた。
『下賤』というのはよくない言葉だということは、実家のグレニー食堂で働いていた時に、商人の客同士の会話を聞いていて覚えていた。
「オリヴィア様。今、私の悪口言いました? 錬金術師様に言いつけますよ」
エリナがオリヴィアを睨みながら言うと、ロレッタが慌ててオリヴィアを擁護する言葉を並べる。
「オリヴィア様がエリナ様を悪く言うわけないわ。『下賤な者』というのはこの男、レン・クリプトン子爵令息のことですわっ」
「ロレッタ様も『ししゃくけ』なんですよね? 下賤って、人を下に見ることでしょう?」
「侯爵令嬢のオリヴィア様が子爵家の者を下に見るのは当然のことですっ」
「オリヴィア様は『ししゃくけ』のロレッタ様も『下賤な者』だって思ってるの?」
「わたくしの失言を認めます。認めればいいんでしょう? もうこの話は終わりにして。料理を取りに行きましょう、ロレッタ。午後の授業に遅れてしまうわ」
「はい。オリヴィア様」
オリヴィアはロレッタを連れて食事を取り分けに行った。
エリナは苦手なオリヴィアが去って、安堵の息を吐く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます