第11話 エリナ・グレニーは錬金術師になる勉強をするための『学校』に行きたい

エリナの部屋は、田舎町ディーンにある万屋の主人、ダン・オーティスが制作した木製の家具が置かれている。机も本棚もベッドも、角が取れた丸みのあるデザインで、温かみのある木目の色調が、エリナはとても気に入っている。

この部屋は、元々、エリナの母親のユージェニーが子どもの頃に使っていた。

部屋の壁や天井は少し薄汚れ、机には傷がある。

ベッドカバーや枕カバーは、母親がエリナのために、手製の物を用意してくれる。

エリナは裁縫が苦手だけれど、母親に習って枕カバーは作れるようになった。

初めてエリナが縫った枕カバーは、父親が、今も大切に使っている。


ニナを自室に招き入れたエリナは机の引き出しから『錬金素材手帳』を取り出して、机の方を向いている椅子の向きを変えた。


「錬金術師様。椅子に座ってください」


「ありがとう。エリナ」


ニナはエリナにお礼を言って椅子に座り、差し出された『錬金素材手帳』を受け取った。

そして『錬金素材手帳』をめくる。

『錬金素材手帳』というのは、錬金術師のニナが幼いエリナに渡した物で、エリナが見て、触れて知った、錬金素材になり得るアイテムが記載される。

エリナの『錬金素材手帳』が100ページになったら、ニナの弟子にしてもらう約束をしている。

今、エリナの『錬金素材手帳』は60ページで、100ページには40ページほど足りない。


エリナの『錬金素材手帳』を確認し終えたニナは『錬金素材手帳』を閉じて傍らに立つエリナに視線を向けた。

エリナの顔は、尊敬するニナに自分の頑張りの証である『錬金素材手帳』を見てもらったことへの緊張と高揚で強張っていた。


「これなら、大丈夫そうね」


ニナはエリナに微笑んで言う。


「えっ!? 私、錬金術師様の弟子にしてもらえるんですかっ!?」


エリナは若葉色の目を見開いて叫んだ。

エリナの言葉を聞いたニナは苦笑して首を横に振り、口を開く。


「いいえ。弟子にするのはエリナの『錬金素材手帳』が100ページになったらよ。そうではなくて、私の学校に入学しても、ついてこられそうだと思ったの。私、コルム島に学校を建てたの。錬金術師を育てる学校よ」


「がっこうって、なんですか?」


「錬金術師になる勉強をするための場所よ。エスター王国とグウェン帝国、それから西方諸島連合国から資金の提供を受けていて、その三国が推薦した生徒を受け入れることになっているの」


学校が『錬金術師になる勉強をするための場所』と聞いたエリナは、若葉色の目を輝かせた。


「錬金術師様っ。私、がっこうに行きたいです……!!」


「では、私が建てた学校『白紫の錬金学院』の説明をするわね」


ニナは、錬金術師としての自分の通り名である『白紫の錬金術師』を名前に織り込んだ『白紫の錬金学院』の概要の説明を始めた。

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