第69話 エリナ・グレニーとレンはナイジェルの錬金窯を覗き込み、困惑する
錬金に成功したナイジェルは錬金窯を覗き込み、困った顔をしている。
「ナイジェル様、どうかなさいましたか?」
エリナと一緒にナイジェルの錬金作業を見ていたレンが、ナイジェルに問いかける。
ナイジェルは錬金窯を覗き込んでいたナイジェルはレンに視線を向けて口を開いた。
「ハンドクリームの錬金に成功したのはいいけど、これ、どうすればいいだろう?」
ナイジェルは錬金窯の中を指さして言った。途方に暮れている。
エリナとレンは錬金窯の中を見た。
錬金窯の中には白くどろりとした粘性の高い液体……のようなものがある。
「ナイジェル様。これ……なんですか……?」
「ハンドクリームを作った。図書室で調べた時に回復薬と潤い草で作ることができると書いてあったから……」
「俺が、シリル様か錬金術師様を探して呼んできます」
レンはそう言って足早に教室を出て行った。
ナイジェルはレンを見送り、ため息を吐く。
「『収納の小袋』の錬金をした時は、完成した物が浮いていたから、取り出す時にどうするかということを考えもしなかった。瓶に入ったハンドクリームが完成するような気がしていたんだ……」
「私も『収納の小袋』の錬金をした時に気づかなかったことがあって。錬金した時に水の中に入れていたのに、取り出した『収納の小袋』は濡れていませんでしたよね? さっき、錬金失敗した時に錬金窯から回収したソルトハーブも濡れていなかったんです。不思議ですよね」
「確かに、言われてみれば『収納の小袋』は濡れていなかった。この錬金窯の中に入っている水のようなものは、いったい何なんだろうね……」
ナイジェルとエリナが話をしていると、教室を出て行ったレンがシリルを伴って戻って来た。
「シリル様、来てくれたんですね。レン、シリル様を呼びに行ってくれてありがとう」
満面の笑みを浮かべて言うエリナに、レンは微笑んで肯いた。
「シリル様を探していたら、偶然行き会って」
「そうなんだ。よかった」
レンの言葉を聞いたエリナは素直に納得し、ナイジェルは探るような視線をシリルに向けた。
シリルはナイジェルは探るような視線に気づいていたが、そのことには言及せずに、自分の『収納の小袋』からクリスタルで出来た柄杓を取り出す。
「これは『錬金柄杓』だよ。錬金したアイテムだけを取り出すことができる。これは僕専用の『錬金柄杓』だから僕が使うね」
『錬金柄杓』を手にしたシリルはそう言って、ナイジェルの錬金窯の中を見た。
「錬金したアイテムを入れる入れ物は用意している?」
シリルの言葉に、ナイジェルは首を横に振って口を開く。
「いいえ。錬金が成功したら瓶に入ったハンドクリームが完成するような気がしていて……」
「そういう場合は、ガラス瓶と一緒に錬金するといいよ。じゃあ、今回は特別に、僕が錬金したガラス瓶に入れよう。贔屓だから、他の生徒とお師匠様には内緒にしてね」
シリルはそう言いながら、自分の『収納の小袋』からガラス瓶を取り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます