第79話 エリナ・グレニーは図書室で『炎熱石の粉』か『炎熱石』のことが書いてある本を探す

エリナは『Ⅱ-4』教室内を見回って販売されているアイテムを書き写し終えた。

筆記用具を『収納の小袋』にしまい、ノートはそのまま手に持つ。

そろそろ図書室に行こう。


図書室に到着した。

エリナは図書室に入り手に持っていたノートを開いた。

『Ⅱ-4』教室内で販売されていたアイテムを書き写した内容に目を通す。

まずは何を探すべきだろう?


「やっぱり『炎熱石の粉』かなあ……?」


エリナは小さな声で呟き、ノートを閉じた。

アイテムを『乾燥』させたいのだから、熱を加えられそうな物


『炎熱石の粉』か『炎熱石』のことが記載してある本を探したい。

エリナは書架に移動して、周囲に生徒の姿が無いことを確認した後に口を開く。


「『炎熱石の粉』か『炎熱石』のことが書いてある本ってどこにあるの?」


エリナが小さな声で問いかけると、床を木靴の踵で叩くような音がした。

木靴の踵で叩くような音は、少しずつ遠くなる。

エリナは音の後を辿って歩き出した。


「あら、エリナ様も図書室にいらしたのですね」


エリナが移動した書架には、食堂で別れたロレッタ・デヴァイン子爵令嬢がいた。

話しかけられた声で、音が聞こえなくなったエリナは唇に静かにするようにと人差し指を立てる。

エリナの仕草を見たロレッタは肯き、口を閉じた。

ロレッタが喋るのをやめたので、また床を木靴の踵で叩くような音が聞こえ始める。

エリナは音を追い、ロレッタはエリナを追って歩き出した。

やがて、エリナの前に書架から一冊の本が飛び出す。

以前、本が飛び出したのを見たことがあるエリナは、期待通りの反応を得て嬉しくなった。

この図書室には、見えない誰かがいる。そして、その見えない誰かは、エリナの呟きを聞いて、必要な本を見つけてくれているのだ。

エリナは飛び出した本の背表紙を確認する。背表紙には『コルム島で採取可能な鉱物』と記載してあった。

ロレッタは、突然本が飛び出したように見えて驚いたが、エリナに静かにするように指示されていたので黙っていた。


「ありがとう。この本、見てみるね」


エリナは小さな声でお礼を言い、本を手にする。

ロレッタは、エリナが誰にお礼を言ったのか気になって周囲を見回したが、目に映る範囲には誰もいない。


「あの、エリナ様。今、誰にお礼を仰ったのですか……?」


ロレッタは幽霊や怖い話が苦手だ。幼い時に、意地悪な令嬢から屋根裏部屋に住み着く幽霊の話を聞かされて怖い思いをしたせいだ。

もしかして、この図書室には幽霊がいて、エリナには幽霊が見えているのだろうか……?


エリナはロレッタに微笑み、口を開いた。


「この図書室には、見えない誰かがいるんだよ」


エリナの言葉を聞いたロレッタは、恐怖のあまり足から力が抜け、その場に座り込んでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る