2023年9月5日(火)
おまぁぁぁぁぁぁぁんっ
吾輩の絶叫が職場に響く
後頭部に走る強い痛みと硬さの感覚
からの体側面に走る痛み
閉じた瞳を開くと真横に床が見えた
ずきずきと体中が痛むなか、立ち上がる
騒がしくしたことを謝罪せねば
……。。
誰も見向きもしていない
どこかから舌打ちが聞こえた
吾輩、悲しくなった
隣の人に視線を向ける。目も合わせてくれなかった
もっと悲しかった
日本はどうにかなってしまったと思った
それか、瞳を閉じて吾輩を心に思ってくれているのだろうか
それだけで良いと思っているのだろうか
平○堅じゃあるまいし、それで良いはずはない
やはり日本はどうにかなってしまったんだと思う
待てど暮らせど 抜け殻の吾輩が隣にいることに誰も気づいてくれないため
仕方なく背もたれを拾う
吾輩を羞恥と孤独の大海に沈めた背もたれである
数日前、椅子の下にネジが落ちているなと思いながらも特に修理を依頼しないでいた
こともあろうにそのネジを良い感じのオブジェのように机に飾ってもいた
それが災いして、今日というこの日
背もたれが外れたのである
当然、背もたれにもたれた瞬間に外れたのであるから
吾輩、後頭部を壁にごちんからの床に体がばちんしたのである
それ故の
おまぁぁぁぁぁぁぁぁんっ、であった
修理係の人はもういない
とうに帰宅してしまったはずだ
だが、仕事を残して吾輩、帰ることはできなかった
以外と真面目なのである
仕方なしに背もたれを正しい位置にはめこむとネジをつけなくとも、
一応それらしい形は保たれた
どう頑張ってもネジをはめる位置を見つけられなかった吾輩
らしい椅子に腰掛ける
背筋ピーンの背筋シャキーンなのである
少しでももたれようものなら、
数十行前の吾輩リプレイになってしまうため
慎重に腰掛けて使う
背筋ピーンの背筋シャキーンなのである
厄年でもないというのに
何であろうか、この不運
吾輩 天を仰いで責めるかの如く
きっと天井を睨みつける
おまぁぁぁぁぁぁぁんんんっ
ごちんっ、べちんっ、イテテのとほほ
天なんか仰いで良いものではないのである
人間、常に背筋ピーンの背筋シャキーンでなければ
ごちんっにべちんっなとほほになってしまうようだ
吾輩、背もたれを拾ってはめこむ
ふと周囲を見渡す
気づけば人影はない
吾輩と職場とそれから椅子
夕闇の迫りが早くなったのが窓から見える
闇が世界に降りてくるのだ
吾輩、背もたれの残念な椅子をコロコロ押す
宵闇が近づく
部長の席に辿り着く
吾輩とそっくりな椅子
そろりそろり ころころころ
吾輩、机にころころころ
外はすっかり夜である
良い仕事をした
良い汗もかいた 今日はゆっくり眠れそうだ
翌朝、仕事をしていると悲鳴に似た叫びがあがった
だが、誰も顔を上げようとしない
吾輩も顔をあげない
今日も一日頑張ろう
もたれた背もたれはギシギシ音が鳴っていた
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