第30話 約束?なにそれ?食べ物?

 連れて行かれたところは優奈の家の前だった。


「ゆ、優奈、これは一体……」

「……私は璃乃みたいに曖昧な態度ばかりとって憲一を困らせたりはしないから」


 と言って優奈は鍵を開けた。

 

 もちろん中は誰もいない。


 奈津子さんは店に行って開店のための準備で忙しいことを知っているから。


 優奈が俺の横顔を見て手招いた。


 俺は固唾を飲んで中に入る。

 

 玄関で靴を脱いでいる俺は、嗅ぎ慣れた匂いが漂っていることに気がついた。この家に来たのは初めてだが、奈津子さん独特の匂いが俺の鼻口を擽った。


 間違いない。


 優奈と奈津子さんは間違いなく親子関係である。


 なのに優奈は……


「きて」

 

 そう行って、俺の腕を引っ張って自分の部屋へと向かった。


 彼女の部屋に入ると、いかにもギャルっぽい内装が俺の目に入った。コスメの数々、服、小物などなど、実に今をときめくJKっぽい部屋だ。


 俺はちょっと当惑しているが、一時の感情に流されて取り返しの付かないことになり得ることはするべきではないと、うちなる自分が囁きかけた。


 そう。


 これは、俺たちのためだ。


「優奈、流石にもう一度ちゃんと考えてから決めても良くないか。流石にこれは」


 俺は説得するような口調で優奈に言ったが、彼女はびくともしない。


「私、ずっと前から決めたもん……憲一の彼女にないたいって……そのためなら、私、なんでもするから!」


 優奈はとても真面目な表情で説いたので、俺は肩を竦めて視線を逸らした。


 彼女の青い瞳は嘘偽りなんか全くないと思わせるほど清くて透き通っている。

 

 この真っ直ぐすぎる視線が不覚にも痛く感じられたので俺は目を逸らして問う。


「……俺は普通の男子と違って、老け顔だろ?お前は、イケメンとが好きだと思ったんだけどな」

「憲一」


 俺が自信なさげに言うと、優奈が冷静な口調で俺の名前を呼んだ。なので、俺は条件反射的にまた彼女の綺麗な顔に目を見やる。


 改めて見ると、本当に綺麗だな。


 伊達に学校一綺麗でかわいいギャルと呼ばれてないな。これは。


「最初はそうだったの。私、いつも付き合う時は、イケメンじゃなと人間扱いしてなかった」

「ひどい外見主義者だ」

「……死んだパパもめっちゃ格好良かったから。でも、パパは浮気ばかりして本当に人間クズだった。でも私、いつもパパみたいな人ばかり探して……」

「……」


 なるほど。優奈にそんな過去が。


「付き合ってた彼氏は全部、私の体目当てで、腹黒で、本当に碌でもないケモノばかりよ」

「そ、そうか」

「でも、憲一は例外」

「俺が?」

「私を全然特別扱いしてないし、エッチな目で見てないし……」

「お、おう」


 まあ、俺が彼女とまともに話し合いができるのは、彩音さんと奈津子さんのおかげだと思うが、今は気にしないでおこう。


「それに、めっちゃ優しいし、私をちゃんと守ってくれるから……一緒にいると、なんだか心超落ち着くというか」


 いや、いきなりそんなこと言われるとちょっと恥ずかしいんですけど?


 俺は戸惑っているが、優奈は俺を逃すまいと、とても真っ直ぐな視線で俺を捉えて、情熱的な表情を見せる。

  

 そんな彼女の姿を見て、俺はふと一年前の出来事を思い出してしまった。


 あの時の璃乃はとても冷たく、距離感を感じさせるような表情だった。


 別に今となってはどうでもいいが、なぜか、気がつけば、俺は優奈と璃乃を比べていた。

 

 人を比較するのはあまり好きじゃないが、不思議と俺の頭にはあの場面が浮かんできたのだ。


 同級生からこんなに熱い想いを告げられたのは初めてだ。


 彩音さんの時とはまた違う斬新さがある。


 優奈は、巨乳がついている上半身をちょっと揺らしながら、続ける。


「だから、憲一には私の処女あげてもいいよ……どうせ、私の体狙ってる男多いし、早く憲一にもらって欲しかったけど……」

 

 優奈は途中から涙を流し、切なく俺を見つめる。






「憲一は私のことあまり好きじゃないっぽいから……なんだか、悲しいね」






「っ!!!!!!」


 

 俺は鈍器で後頭部を殴られた感覚を味わった。


 確かに最初会った時は本当に無礼でじゃじゃ馬で生意気なやつだなと思ったが、


 だが、こんなに俺を求めてくる姿を見ると、

 

 心の中で眠っている何かが目覚めるよう気がした。


 据え膳くわぬは男の恥。


 俺は悲しんでいる優奈の唇を優しく貪った。



「っ!!!け、憲一……」

「ったく……優奈。お前、自分がどれだけかわいいのか自覚しろ」

「……かわいいのは知ってるよ。でも、憲一にとっても私はかわいい?」

「当たり前だ!」

「っ!!!そ、そうなんだ……」

「優奈」

「は、はい!」




「俺を興奮させるなんて、もうどうなってもわからんから」






「……」



 彼女は俺から目を逸らして、控え目に頷く。


 なので、俺は




 彼女の爆のつくサイズの胸に遠慮せず俺の手を伸ばして、鷲掴みにする。それと同時に、空いている手で優奈の背中を捉えて、そのまま俺の方に抱き寄せる。



「っ!け、憲一……私、初めてだから、優しく……」

「ああ」


 俺は彼女をお姫様抱っこしてベッドに下ろした。


 制服を着ている俺と優奈。


 でも、


 優奈は






 完全に女の顔をしている。








 


 俺はこれまで、彩音さんと奈津子さんによって培われたテクを総動員して





 優奈の体を



 余すとこなく






 貪り尽くした。






 彩音さんと奈津子さんと交わした約束なんか思い出せないほどに



 



 

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