第33話 ヤンママには勝てまい

「憲一くん」

「憲一」

「憲一くん」

「憲一」


「……」


 四人は目を細めて俺の名を読んだ。


 なんだかこの四人の後ろから真っ暗な何かが出ている気がするが、気のせいだろうか。


「私の娘ともやるなんて、憲一くんは本当にいい度胸してるわね」

「いや、少なくともその件については、俺は無実です!」


 俺が手を全力でブンブン振ると、璃乃が口を開いた。


「お母さん、私、憲一くんのこと好きだから、もう邪魔しないでくれる?」


 いやいやいや。


 さっきまでお前の母さんの官能小説を絶賛してたくせに手のひら返すの早すぎるだろ。


「ちょっと!璃乃!なに言ってんの!?私の彼氏だから!」

「付き合ってからまだ一日しか経ってないでしょ。なに彼女面してるの?」

「彼女だからだよ!」

「ちょっと、二人とも落ち着いて……」


 黒髪美少女である璃乃と金髪の美少女ギャルである優奈はお互いを睨んでいる。


 彩音さん、奈津子さん、ちょっと助けてくれます?娘でしょ?


 と、俺が二人の母さんに視線をシフトさせると、なぜかこの美人お母さんたちは困り顔だ。


「優奈、やっぱり昨日の話は無しだ。憲一と付き合うのはやめた方がいい」

「はあ?ママなに言ってんの?まさか、まだ憲一に未練があるっていうの?」

「その方が優奈のためになると思って……」

「いや、完全にママの私情を挟んでるだけでしょ?」

「……」


 奈津子さんは、自分の金髪をみょんみょんいじりながら目を逸らす。


「璃乃もやっぱり憲一とそういう関係になるのは、あまり良くないと思うわ」

「お母さん……他の格好いい男を探せばいいじゃない」

「それはね、

「……」


 彩音は一瞬ヤンデレ顔で答えたが、何か思いついたらしく、物憂げな顔で、ふぁとため息をついた。


 優奈は、そんな二人を見て、勝ち誇ったようにいう。


「本当!年甲斐もなく、なにやってるの!?綺麗だからと言って、若い私に勝てるわけがないじゃない!いくらがんばったっておばさんはおばさんよ!」


 デカすぎる胸をそらしていたら、隣の璃乃が呼応する。


「そうね、年は大事よ」


 なんかさっきまで二人めっちゃ仲悪かったのに、こういう時は息ぴったりだな。


 俺がドン引きしていると、彩音さんと奈津子さんは意を決したようにふむと頷いてから娘たちにいう。


「璃乃はに勝てないわ」

「あまり自惚れるなよ、優奈。痛い目に遭うから」


 お母さんたちの忠告なんかどこ吹く風と、娘たちは続ける。


「男は若い女を好むわよ」

「そうそう。私たちはJKよ。負ける訳が無いじゃん?負け惜しみ?」


 娘は二人に挑発するような視線を向けている。


 彩音さんと奈津子さんは、


 それぞれのポケットから何かを取り出した。

 

 そして、その何かを二人の娘たちに見せる。






 線が二つ入っている白い棒が二つ。





「「……」」



 避妊は大事だ








ヤンママ達が絶対勝つ究極のラブコメ









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ヤンママ達が絶対勝つ究極のラブコメ なるとし @narutoshi

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