第19話 ダンジョンへのお誘い
突然俺と内田の間に入ってきて訳のわからんことを言う柊に俺たちは呆然としながら彼女を見つめる。
どれくらい経ったんだろう。俺は相変わらず今の状況に頭が追いついていないが、内田は違うらしい。
突然目の色が薄くなり、柊を睨み付ける。
な、なんだこの変わり様?
どこかで見覚えある気がするが……
俺が思考を巡らそうとしていたが、内田の声によって遮られる。
「確か、柊優奈さんだよね?」
「そうだけど。内田璃乃……」
「あら、私の名前、知ってるんだ」
「そりゃ、あたり前でしょ?この学校であんたを知らない人っているの?」
「それは柊さんも似たようなもんでしょ?」
と、二人は腕を組み、鋭い眼光を向けあっている。パチパチと電気が流れるんじゃないかと思えるほど、この二人の表情には鬼気迫るものがあった。
まだ朝だ。
しかもここは学校の敷地内。クラスへと行くために昇降口へと歩く男女は結構多い。
当然、俺たちは願わずとも注目の的と化した。
「内田、私工藤に話あるから退いてくれる?」
「ふん〜柊さん、私が先に工藤くんと話していたけど?」
「はあ?あんたが一方的に工藤に話しかけただけじゃん。連絡先なんか聞いてどうするつもり?」
「……」
や、やめて……
なんでいがみ合うんだよ……
全く全然理解できねー。
と、俺が戸惑っていると、急にまた誰かがやってくる。
「二人とも落ち着いて」
そう。この二人を仲裁すべく、普段から俺を警戒する橋本がやってきたのだ。
こいつは一瞬の間、俺を見下すような視線を送ってくる。
まるで女の扱いになれてない奴が出しゃばるんじゃねーよと言わんばかりの表情だ。
だが、彼はすぐ表情を変え、にっこりと優しく微笑みながら二人に話してくる。
「璃乃ちゃん、優奈ちゃん、俺と一緒に行こうか。多分工藤くんが原因だよね?」
と、橋本は自然な流れで二人の肩を触りそっと押す。
だが、
「はあ?あんた、勝手に体触んないでくれる?きもいんだけど?まじ、きもいから」
「橋本くん……」
柊は汚物でも見ているかのように橋本を見つめて、彼の手を跳ね除ける。そして内田は一瞬ヤンデレ顔で彼を睥睨してから俺にくっついてきた。
戸惑った橋本は、目を丸くして俺たちを見る。
全く……
いい迷惑だぜ。
俺はただ単に普通の学校生活が送りたかったのに、なんでこんなことに巻き込まれてるんだろう。
喧嘩なら他所でやってくよ。
あと、橋本、俺はお前に迷惑かけた覚え全然ないよ。何か俺に不満があるなら直接言え。
頭の中で色んな考えが過ぎるけど、俺は誤魔化すために咳払いして、歩き始める。
「く、工藤くん!?」
「工藤!どこいくの?」
「クラスに行くからついてくんな」
「「ちょっと待って!!」」
と、二人は叫んで、俺の後ろをついてきた。
なんでついてくるんだよ……
後ろを振り向いて深々とため息をつく俺。
橋本は、
そんな俺を見て、
握り拳を作った。
X X X
結局、二人は俺にくっついた状態で、口喧嘩ばかりした。止めようとしたが、彼女らは俺の話を全然聞いてくれそうな雰囲気ではなかったから、俺のクラスの前に着いた頃は、柊は怒りを露わにした。
内田はまるで柊を挑発するような態度を取ったけど、柊は歯噛みしながら引き下がった。
ほら、クラス全然違うのに入るのはめっちゃ目立つだろ?
そんなこんなで、授業を受け、気づいたら放課後だった。
「憲一!今日は一緒に行こうな!お父さんの仕事やっと落ち着いたわ」
「おう!それはいいね!絶対一緒に行こう!絶対な!」
「え?急にどうした」
「裕翔、お前が恋しくなったんだよ」
「気持ち悪い。そんな言葉は俺の妹にでも言っておきな」
「はよ帰ろうぜ」
「うん!」
と、いう訳で俺は裕翔と一緒に教室を出た。
途中、霧島や内田がめっちゃ見つめてきたけど、俺はスルーして進んだ。
そして、廊下で待機していた柊に至っては、なぜか裕翔を睨んでいた。
ごめんよ裕翔。
お前をバリアとして使って。
後で俺が高い寿司奢るから、今日はちょっと甘やかしてくれ。
俺たちは久々に並んで下校した。
「憲一」
「ん?」
「なんかさ、お父さんの仕事を手伝った時感じたことなんだけど」
「おう」
裕翔の父さんは和菓子屋をやっている。なので、忙しいシーズンは本当に猫の手でも借りたいほどの多忙さだ。
「やっぱり橋本みたいな人よりかは、ちゃんと汗水流して働く地味な人の方がいい人生だと思うよ」
「え?どういうこと?」
「ほら、最近ずっとあいつ、見えないところで消防士になろうと筋トレとか色々頑張っている憲一に対して敵意を剥き出しているからな」
「あ……そうだな」
「内田さんと話せるようになってからだよね?」
「……」
やっぱり裕翔は感がいい。
「俺は内田さんと憲一、釣り合い取れてると思うんだよな〜」
「何言ってんだ。内田は学校一の清純派美少女だぞ」
「ふふ、そうだけど。でも、外観が全てじゃないから」
「外観が予選、中身が本番だとすると、予選で負けたら結局本番勝負のスタートラインにも立てないのが世の常だよ」
「俺はそうは思うわないよ」
「そう?」
「うん!」
と言う裕翔の瞳からは嘘とかネガティブな感情が感じ取れなかった。
彼と別れてから家へと向かう俺。
今日は彼女たちとのデートはない。
だって、昨日あんなに激しかったから、お互い休憩ってもんが必要だということだ。
俺はまた恍惚とした表情をしながら歩くと、携帯が鳴る。
送ってきた人は
彩音さん。
『土曜日にもしよければ私の家に来てくれる?PC運ぶの手伝って欲しいの。私じゃできなくて……ご飯作ってあげるから』
お、おう……
おっと彩音さん、いけませんよ。
昨日の今日だと言うのに、
家に誘うのは……
『行きます』
それと同時に
『工藤くん……カフェ、行かないの?』
もちろん
『行くよ』
追記
憲一、ダンジョンに入る
続きが気になりましたら★お願いします!(1000は越えたい!)
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