第29話 友達とは

翌日



 二人と激しく交わってから一日たった今日の俺はちょっと気まずさを感じていた。


 というのも、その二人の娘である璃乃と優奈が俺と同じ学校に通っているから。


 しかも璃乃は俺と同じクラスである。


「はあ……」


 ため息をついていると、璃乃が後ろを振り向いてくる。


「っ!」


 彼女は俺と目が合った瞬間、急に体を痙攣させ前を向いた。


 明らかに俺を意識……


「やっべ……内田さん、最近ずっと俺のこと意識しとるや……これ、もしかして脈アリなんじゃね?」

「いや、どう見ても俺を見てただろ?お前の目は飾りかい」


 後ろに座っている奴らが言い争いを始めた。


「……」


 俺は頬杖をついたまま予鈴が鳴るのを待った。


X X X

 

昼休み


 クラスで裕翔と一緒に弁当を食べながら談笑を交わす俺。


「裕翔、また今日も仕事の手伝いかよ」

「あはは……バイト代は貰ってるから、悪い気はしないけど、最近忙しくてね」

「今日は俺、時間空いてるし、手伝ってあげようか?力仕事は得意だから」

「いいよ!なんか、今日は憲一にいいことが起こりそうな予感がするからな」

「い、いいこと?」

「うん。いつも憲一は苦労してきたからな。いいことがあってもいいと思うよ」


 おお、


 裕翔の占いはめちゃくちゃ当たる傾向があるからな。


 今日はどんなことがあるのだろうか。


 期待に胸を弾ませながら俺は食事を取った。


 そして気がつけば放課後。


 裕翔は予定通り、父の仕事を手伝いに真っ先に学校を出た。


「いいことか」


 彩音さんと奈津子さん関連だったりするかな。

 

 昨日はマジで最高すぎたんだけど、さらに上があるのか。


 そう考えながら、俺も上履きを脱いで靴に履き替えてから昇降口を出る。


 すると、


「ちょっと」

「来て」


「な!?」


 いきなり二人の女の子が手を引っ張った。


 何を隠そう。璃乃と優奈だ。


 この前の人気の少ない自販機のところに俺を連れてきた二人は、俺の裾を離して、真面目な表情を見せた。


「憲一」

「憲一くん……」


「な、なんだよ」


 やがて、モジモジし出す二人。だが、意を決したように璃乃が口を開く。



「私、憲一くんのこと、好きなの!!」


「え?」

 

 俺は自分の耳を疑ってしまった。それもそのはず。だって、あの璃乃の口から……


「ちょ!璃乃!なんで先に言っちゃうし!ああもう!私も憲一のこと、大好きなの!!」


「優奈まで……」


 突然、学校におけるマドンナ二人から告白を受けた俺は、たまげてしまった。


 俺が口をポカンと開けていると、二人は説明をし始める。


「やっぱり、自分の気持ちを最初からちゃんと伝えるベきだった……今まで隠してごめんなさい……」


 璃乃はマゼンタ色の目を潤ませて言った。そして、優奈が続く。


「私も、変な意地張らずに、もっと早く憲一にアプローチするべきだった……実は私、憲一に助けてもらった日からずっと憲一のこと好きだったのに……ひどいこと言って……」


 優奈は大罪を犯して罪人のように物憂げな表情をしている。


「い、いや、俺、もう気にしてないからそんな悲しい表情するなよ」


 俺は慌てて落ち込んでいる彼女らを励ますための言葉をかけてやった。

 

 だが、


 璃乃は


「でも、憲一くんは、これからも私たちのお母さんと清くない関係を続けていくつもりでしょ?」


「っ!」

 

 彼女の鋭い言葉は、俺の心臓を抉り取るように痛かった。


 璃乃は続ける。


「だから、私がセフレになってあげる。だからもうお母さんと寝たりはしないで」


 優奈も負けじと璃乃に追随する。


「私も!お母さんなんかより、私の方がもっと憲一を幸せにできるから!セフレになってあげるよ!その代わりに私のママとエッチするのは禁止!」


「……」


 これはまさしく四面楚歌だ。


 この二人とエッチなことをしたことがバレたら、彩音さんと奈津子さんにしばかれて俺の息子の人生も終焉だ。


 でも、この二人の気持ちを無視するわけにもいかない。

 

 答えるんだ。


 答えるのだ。憲一よ。


「俺、彩音さんと奈津子さんに言われたんだ。二人のうち一人としかエッチできないって。それに、そのエッチできた人とは絶対結婚するようにとな。だからお前らとそういう関係になることはできないんだ」


「「なっ!」」


 二人は動揺する。


 うん。


 適当にはぐらかしてもいつかボロが出る。だから、ありのままのことを伝えるのがきっと正解だ。


 そう踏んで、俺が二人を見ると、


 急に


 優奈の様子がおかしくなった。



「憲一……すればいいでしょ?私と結婚」

「え?」

「私と結ばれれば全てが丸く収まるじゃん」


 俺が当惑していると、璃乃が急にキレ気味に優奈に向かって口を開く。

 

「優奈!何言ってんの!先駆けは……」








「だって、璃乃は憲一を振ったんでしょ?」




「っ!優奈……またそんなことを言って……」


 と、璃乃は返事するが、気まずくなったのか、俺の顔色を窺い始める。

 

 そんな彼女の様子を見て優奈は勝ち誇ったように自信満々な口調で言う。


「私は憲一を振ったりはしてないよ。でも、あんたは振ったんだからね〜今更手のひら返しても、全然気持ちを伝わんないんだけど?あんたみたいな人を欺瞞者っていうのよ」


「……優奈」


 璃乃は、彼女の名前を口にして、絶望のどん底に落ちたように顔を歪めた。


「憲一♫行こうね!私の本気見せてあげるから」

「ちょ、優奈!あんまひっぱるなよ!お、おい!」


 俺がいくら抵抗しても、優奈は顔色一つ変えずに俺の腕をガッツリ掴んでここから去る。


 

璃乃side



「……」


 去っていく二人の背中を見ながら彼女は胸の痛みを感じる。


 爆のつく巨大な胸を抑えているも、この苦痛はなかなか消えてはくれない。


 彼女の目は



 とっくに色褪せており、


 ドス黒い何かが溢れ出るような視線は、消えてゆく二人を捉えたままだ。





 一日にして、璃乃と優奈の友達関係は崩壊したのである。






追記


うん。

 

リアルでもアリアリなストーリーですな














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