第25話 あ……
X X X
同じ時刻
璃乃サイド
璃乃は霧島美波と柳澤恵と一緒に遊んでいる。母である彩音から有名な遊園地のチケットをもらったので絶賛堪能中である。
璃乃を除けば。
まだ遊園地に来てから1時間も経ってないというのに、璃乃はしきりにため息をついては、浮かない顔をしている。
そのことに気づかないはずがない二人は頷き合って、璃乃に話しかける。
「璃乃、ちょっと話そうか」
「……」
「璃乃ちゃん……」
二人は心配そうに璃乃を見つめている。
と、言うわけで、三人は遊園地の中にあるカフェにやってきた。
「んで、昨日何があったの?つまびらかに説明してごらん」
「そうよ。璃乃ちゃん、ずっと顔色悪いし」
「ご、ごめん。せっかくみんな楽しみにしていた遊園地なのに……」
璃乃は申し訳なさそうに頭を下げる。
「別に謝らなくてもいいよ!」
「そう。私たち、友達だから!」
切れ長の目が印象的な美波が両手をぶんぶん振ると、ほんわかした感じの恵が目力を込めて、サムズアップした。
璃乃はこの二人を見て思うのだ。
こんないい女の子二人と友達になってよかったと。
なので、璃乃は昨日の出来事の一部始終を語った。
「璃乃が悪いね」
「璃乃ちゃんが悪いと思う」
「私が!?」
「そうよ。だって、璃乃がずっと煮え切らない態度取るからでしょ?」
「恋愛において最も避けないといけないのがそういう曖昧な態度なの」
「……」
二人に窘められた璃乃はため息をついて、物憂げな顔をする。
彼女自身もすでに気づいているのだ。
憲一の方から近づいてきてほしいという自分の自己中心的な気持ちを。
そこへ、ほんわかした感じの恵が口を開いた。
「璃乃ちゃん」
「う、うん」
「璃乃ちゃんは柊さんと工藤さんが付き合ってイチャイチャしてエッチなこといっぱいやってもいい?」
「そ、そんなのいやよ!」
「でも、憲一くんは彼女作らず、他の女の子にも優しくしないで、ただ自分のところにいてほしい?」
「っ!!」
ほんわかした感じの恵が璃乃の意表をつくような言葉を言った。
「私、憲一と付き合いたい。憲一にその気がなくても、私がアピールするから……今までの私って本当に馬鹿だったわ」
握り拳を作り、悔しがる璃乃に美波が微笑みを湛えて返事する。
「そうよ!まあ、璃乃は綺麗だからずっとアピールされる側だったけど、好きな男のためなら、女のプライドなんてどうでもいい」
「そうね……わかったわ!私、柊さんに絶対負けないから!」
「よし!そのいきよ!」
「頑張れ!璃乃ちゃん!」
「うん!」
と、その瞬間、
急に停電が起きた。
「XX遊園地からお知らせいたします。電力供給においてトラブルが発生しております。復旧のメドは立っておらず、チケットの払い戻し……」
「やだ……今日はいっぱい遊ぼうと思ってたのに……」
璃乃が名残惜しそうに言う。
仕方なく三人は遊園地を出た。
「美波、恵、ごめん。せっかく誘ったのに……」
「ううん。いいよ」
「停電じゃ仕方ないから気にしないで」
と、二人が微苦笑まじりに璃乃を見ていると、
突然、二人に電話がかかってきた。
結論から言うと、二人とも家族からの電話で、急用ができたらしい。
なので、美波と恵はいそいそと家へと向かった。
一人取り残された璃乃。
「今日は夜まで遊ぶ予定だったのに……」
と、残念そうにため息をついてみる、
すると、自然と浮かんでくる昨日の出来事。
「私のご主人様……こんなはしたなくて、プライドだけ高いメス奴隷をお嫌いにならないで……」
璃乃は上半身をくねらせて、熱い吐息を吐く。
「もう、憲一ご主人様を困らせた罰、なんでも受けますから……なんでも」
そう言う璃乃の目の色はとっくに褪せている。
「身の程弁えぬこの奴隷は一生憲一様のそばで傅かなくちゃ……」
周りの男性は、見惚れて璃乃を見つめるが、決して近づかない。
「家に行こっか」
X X X
内田家
璃乃は二人と別れて直帰した。
ドアの前に立っている璃乃。
すると、変な声が聞こえた。
「ん……くん」
自分の母の声。
彼女は安堵のため息をついて、鍵を開けて中に入った。
すると、
「っ!!!!!!!!」
自分の母の淫らな声が聞こえていた。
今まで一度も聞いたことのない一人のメスとしての声。
自分の母も女だし、男の人とそういう関係を持つこと自体は悪いことではない。
だけど、
「彩音さん。まさかお茶に悪いモノを入れるなんて、とんだ変態さんですね」
「憲一くん……私、憲一きゅんがほしいの。もう憲一きゅん無しじゃ生きていけにゃい……」
「かわいいこと言うんですね。じゃ、もっと可愛がってあげようかな」
母の部屋から聞こえる会話に、璃乃は顔を顰める。
「憲一くん?」
璃乃は総毛立った。
まさか、
自分の母が必死に叫んでいる男の名前、聞き慣れた声。
いや、そんなはずがない。
そう思いつつ、璃乃は震える足をなんとか動かして、自分の母の部屋にやってきた。
そして、
ドアノブに手をかけてドアを開けると、
「「っ!!!!!」」
そこには全裸の男女が、繋がったまま、だらしない顔を曝け出していた。
「お母さん……憲一くん……」
璃乃が言うと、二人は一瞬体をひくつかせて、ドアの方へ目を見やる。
「「璃乃!?」」
追記
あ……
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