第3話 うちの執事は変態
「はあ…」
とため息をついて部屋でどんな難題を与えようかと悩んでいると紅茶が差し伸べられる。
「どうぞ!お嬢様!!」
と私の執事のシモン・デ・ペッチが話しかける。シモンは伯爵家三男の出で、髪は紺色で瞳は琥珀色である。
この男…実は私に惚れているのがバレバレなのだ。それと言うのも
「ありがとうシモン」
と私が言うとクネクネした動きで
「そんな!ありがとうなど…やめてください!お嬢様!どうかその淹れたての熱い紅茶を私めにぶっかけてください!」
とど変態な事を言った。
恍惚な瞳でこちらを見てくる。気持ち悪い。
そう、こいつは…ど変態だ。夢は私に踏んづけられてアソコをグリグリさせられるというとんでもない変態なのだ!
しかしそれは私しか知らない。
そうこいつは…私の前でだけその変態性を見せ周囲には完璧な執事として装っているから末恐ろしいのだ!
こんな奴クビにしてとお父様に言っても証拠もなくお父様の前ではシモンは
「お可哀想に…。お嬢様はどうやら少しお熱があるのかと?旦那様、私はその様なことは申しておりません。お嬢様はきっと疲れておいでです」
と言ってお父様に疑われることなど一切なく周りにも完璧に装っているのでもう諦めた。
「シモン…この紅茶美味しいわよ?貴方本当に優しいわね」
とわざと優しくしてやると
「ああっ!酷い!お嬢様が優しくて酷い!私に冷たい視線を投げかけて『この変態が!』と言って頰をバシバシぶって下さって構わないのにいいい!優しい笑顔で敢えて私にそうさせないところがまた酷くてそそります!」
と結局変態だった。
「邪魔だから出て行ってくれない?考えに集中したいの」
ととりあえず空気として扱うことにしてやると
「…そう言えばさっきから何を考えてらっしゃるのですか?あ、私へのご褒美とか?鞭の調達なら任せてください!」
と言う。自分で打たれる用の鞭を買いに行くの!?
「違うわよ…。ジークフリート様に……婚約破棄させられそうだから…しない様に考えてるのよ」
と私はこれまでの経緯を説明してやる。なんだかんだこいつは私の性格等を把握しているし私が完璧に隠しているジークフリート様への恋心も見事に見抜いている。何故かと問うた事があるがその時は
『ふふ、当たり前です!これでもお嬢様の執事であり好きなのですから好きな方が誰を好きなのかはわかってしまいます。それに私も周囲には完璧に本性を隠してますでしょう?
私とお嬢様は似ているのです。どうです?私のこの観察眼!気持ち悪いと罵ってください!』
と言っていた。
それからはシモンの前では見栄を張っていても意味がないのでとりあえず諦めてもらう為にも相談する事にした。と言うか唯一相談できる。ど変態で一生相手にする事ないから気楽である。
シモンは私の事を好きだが好きな人を応援するタイプだし私に忠誠を誓っている。
「それにしてもジークフリート様が転生者とは…。驚きですね」
「え?信じたの?」
「ええ?逆に信じてないんですか?流石お嬢様酷すぎて痺れる!」
と言う。
「信じてるわよ!!ジークフリート様の言うことなら何でも信じるわよ!」
「まぁ…転生者というのも稀に聞くことがありますからね…身近にいるのは驚きますが…」
ジークフリート様の前世は異世界から来た魂の転生…。
「まぁ、この事は誰にも言わないことよ?余計な騒ぎになりたくないもの。
それより…どんな難題で乗り切るかよ!何かいい案はないの!?」
「絶対に婚約破棄しない方法ですか…。
私ならお嬢様に足の裏を舐めて更に汚いと言われて殴られたら喜んで失禁しちゃいますけどね!」
お前の変態性は聞いてないけど…
「そうね…それなら恥かしくて出来ないかもしれないわ…。そうだわ、皆の前でそれをさせて見ましょう」
「えっ!羨ましいなぁ!ジークフリート様!!」
「普通は嫌がるし屈辱だしやらないわよこんなの!」
「ますます嫌われちゃいますけどね…」
と言われズーンと来る。
しかしここは鬼か悪魔にならないと婚約破棄されてしまう!
「しかしお嬢様…生温いです!これはまだ序の口ですよ。ジークフリート様はどんな無理難題でも叶えてみせるとキラキラしながら言ったのでしょう?
これ…クリアしちゃいますよ?恥くらい彼には我慢すれば良いだけの事!」
と言われうーむと思う。確かにジークフリート様の弱々しい精神なら私の命令には絶対に背かないわね!ど変態シモンの言う通りだ。
「それにあまり過度なことを人前でなさると教師の目が光ります。ほらお嬢様も知ってるでしょう?
コンスタンティン・フォン・ベッケル先生を」
とシモンは言う。
「よく知ってるわよ。うちの公爵家と対立しているこの国の5大公爵家のうちの一つベッケル公爵家次男で化学教師!そして男色の変態でジークフリート様を狙っている男!許すまじ!!」
「まぁ、ベッケル公爵家は元々が男色家系遺伝で真性の変態ですからね。正妻は男性でありその辺のどうでもいい令嬢を空気第二夫人として家系を繋いでいますしね。ベッケル家の男色の遺伝子は異常ですよね」
「ど変態のあんたが言ってもいいものかわからないけどね…」
「ああ!お嬢様がど変態と!嬉しい!」
だまれ変態が!
「しかもまだ敵は多いですよ。ジークフリート様はあれでおモテになるからなぁ!天然と言うか!他にもお嬢様の取り巻きである伯爵家令嬢や一年生の隣国の甘え妹ポジション獲得の第四王女様とかあ!」
と頭が痛くなるほど敵は多かった。
「そうねほんと…なんでジークフリート様はあんなにモテるのかしら?まぁ当然よね、あんな美少年でサラサラの黒髪に綺麗な青い目でジッと見られたら誰でも堕ちてしまうわ!くっ!!」
「お嬢様…そのストレスに私を踏んづけてグリグリしてください!」
黙れ変態。
無視してどうしようかと考えシモンは
「ではこういうのはどうでしょうか?
お嬢様が絶対にときめく様なデートにしてみろとか。
プライドの高いお嬢様をときめかせることなど並みの男では難攻不落かと?私でもとても無理です。
私は踏まれれば喜びますけどね」
とシモンが言った案に対し私はうなづく。
「悔しいけどいい案だわ。ジークフリート様とデートも出来て一石二鳥だけどこの私のプライドは私自身でも制御できないわ。私は内心ときめきバンバンだけど外では絶対出ないものね…、くくく面白くなってきたわ」
「悪役的な笑いを含むお嬢様最高です!踏んでください!」
としつこい。
私は第一の案にそれを書いた。
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