第35話 シモンへのご褒美

 あああっ…ジークフリート様ったら…!

 二人きりになると随分と甘くなったわ…。流石の私もメロメロでしてよ?

 メロメロは前からだけど…しかも早く結婚したいだなんて!

 きゃーーっっ!!

 私はもう朝から幸せ全開であった。


「お嬢様…時間でございます」

 と制服を着たシモンが待ち構えて鞄を持ち私達は馬車に乗り込む。


「シモン……私幸せ過ぎて死にそうだわ」


「私はお嬢様に踏まれない事が辛いです。ジークフリート様と想いが通じたら踏んでくださると言ったのに…イチャイチャしすぎて忘れているでしょう?」

 と言われる。忘れていたわそんなもの。


「でも…なんか足が穢れそうで嫌だわ」


「踏む価値もないと!?そんな非道なお嬢様も好きです!」


「私にはジークフリート様がいるからやめて」

 と断るとシモンはしゅんとした。


「うーん…そうね…約束だものね…。仕方ないから今度踏んであげるわよ」


「えっ!?ついに本当に!?や!やったあ!!お嬢様言及は取りましたよ!絶対に踏んでくださいね!!」

 とシモンは嬉しそうに笑い約束だと何度も言う。本当に変態に育ったわねシモン…。出会った頃はまだまともな部類だったのにね。としみじみ思う。


 *

 そしてシモンを踏みつける当日…廃洋館にルミナとジークフリート様とジークフリート様の護衛のライアスさんが揃っていた。


「お嬢様……二人きりじゃないんですね…」

 とガッカリするシモン。


「私にはジークフリート様という婚約者がいるのにあんたと二人きりになるわけないでしょ!?身の程を弁えなさい!


 幸いにこの三人はあんたの趣味を理解しているからいいじゃない」


「え?ジークフリート様…ライアスさんにも、しゃべったのですか?」

 と言うとジークフリート様は…


「えっとあの…す、すみません…僕…こんな場面に呼ばれるとは思わなくて廃洋館にも行くと言うからライアスさんが着いて行くと聞かなくて」

 と申し訳なさそうに言う。


 ライアスのおじさまは指を立て


「若いっていいねぇ?おじさんも綺麗なお姉さんに踏まれたいなぁ」

 と言った。


 ルミナは


「私はお姉様がシモン様を踏みつけているところを参考に踏みつけ方の練習をして将来的に私がシモン様を踏んで元気づけてあげれたらと!」

 と見学者宣言をした。妹まで変な趣味を持ってしまう。もうさっさと終わりたい。


「……まぁ…見られながら踏まれるのも興奮するかもしれません、お嬢様…思い切り踏んでくださいね!ジークフリート様すみません!お嬢様の足が穢れてしまう事をお許しください!」

 と謝るシモンにジークフリート様は引くが


「……こんな事早く終わらせてくださいね…。というか靴履いたまま踏み付けるんですよね…。僕は恐ろしくて見てられないかも…」

 とジークフリート様は自分のを隠して震えた。


「大丈夫ですわ、この靴は終わったら廃棄しますし」


「廃棄するくらいなら私にください!」

 とシモンがお願いする。キモ!


「とにかく始めるわよ!廃墟だから思い切り叫んでもいいけど本当にこれきりよ!」

 と言うとシモンは


「はい!お嬢様へのこれまでの想いを断ち切るためにも思い切り私のあそこをグリグリと踏んづけてください!例え不能になろうとも構いません!」

 とシモンは決意して床に転がった!


 シモン…これから無様な姿を皆に見られても貴方は大丈夫なのね。シモンの夢だし、私への想いもこれで断ち切ってくれると言うなら私は…鬼になるわ。


「行くわよ!」

 私は足を振り上げシモンは期待に満ちた顔で待つ。


 そして…皆の前で私は思い切りシモンのを踏み付けてやった!ちなみにヒールの先である。捨てよ。ほんと終わったら捨てよ!


「あっ…あっ!ああ!」

 と早くも恍惚な顔をするシモン!変態だわ!


「シモン様があんなに幸せな顔を!ううっ!」

 とルミナは辛そうだ。何でこんな変態に恋してるのかわからないわ。妹よ。

 仕方なくあれをグリグリと高速で押していると


「ふっはああっ!きたきたきた!…あああう!お、お嬢様!罵声を罵声をかけながらお願いしますっ!」

 と注文が来る。一体何の時間なのよ。仕方なく


「この変態男が!この粗末なものは潰れてしまえばいいわ!二度と私の前で膨らませるんじゃないわよ!


 わかったわね!?」


「ふぁーーーーーー!!!」

 とシモンはもはや天国に逝きそうな顔で目はハートになり口からは涎が垂れ鼻血まで垂らした。


 ジークフリート様は固まりどん引いて、ライアスさんは椅子に腰掛け


「若いっていいわぁ」

 と生暖かい目で観察していた。


 とうとうこの変な踏み付けが終わり私は靴をシモンに放り投げて新しい靴に履き替えた。

 踏みつけが終わったシモンは私の先ほどの靴を大事そうに抱えて頬擦りしてなんと泣き始めた。


「うっうっ!ありがとうございますうううううう!!このシモンこれでもう思い残す事はありません!!いつ死んでもいい!」

 と叫ぶ。


「シモン様死なないでください!ルミナがお姉様の様に踏んであげますから!!お願いですから死なないで!」

 と懇願する妹に引いた。


「ルミナ様……。貴方は本当にお優しいですね…。ありがとうございます。貴方の成長を待っております!」

 とニコッと笑うシモンにキュンとする妹に更に引いた。


 ジークフリート様はようやく石化が解けたようになり


「………まぁ…あの…夢が叶って良かったですね…ははは…」

 と棒読みな台詞を吐いていた。


「ジークフリート様もお嬢様に踏まれたくなったら私にご相談を」


「僕はそんなっ!」


「そうよシモンなんて事を言うのよ!!やめて!」

 逆ならありよ!ジークフリート様が見下した様な瞳で私の事を踏みつけてくれたら嬉しいけど天使なジークフリート様を私が踏みつけるなんてあってはダメ!


「失礼しました。ジークフリート様の方がお嬢様を踏んで差し上げるとよろしいかと」

 と心を読んだかの様にシモンは礼をする。


「いやっ…何で僕がマリアンネ様を踏まなきゃならないのおおおお!!?」

 と絶叫するジークフリート様だった。

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