第34話 パンケーキ絵の練習

 ジークフリート様にオムライスならぬパンケーキに絵を描いたものをお出しすると約束したからには徹底的に完璧なパンケーキ絵を描くのみですわ!


 と私は料理人の格好をして…レンブラント伯爵家の厨房にいた!


 可愛い妹のルミナがお世話になっているレンブラント伯爵家の厨房だ。

 公爵家の厨房ではとても立ち入る事ができないだろうからルミナにお願いしたらあっさりと了承してくれた。


 そう、私はパンケーキ絵を必ず完成させるのよ!!

 と意気込む。ルミナもシモンに作りたいと言い、シモンは私に作りたいと言うので3人は厨房に立ち、元々のレンブラント家の料理人は3人の気合いに気圧されて出て行った。


「シモン様!私頑張りますわね?シモン様はどんな動物がお好きなのですか?」

 とルミナがボウルに泡立てながら聞くとシモンは


「私は…犬ですかね?犬とは忠実で良いです!主人を信頼し時には尻尾を振り時には腹を見せ時には這いつくばって餌をねだる時はお手をしち●ち●芸して主人を楽しませる…そんな犬に私はなりたい!」

 願望が出てどうすんのよ、この変態!


「ああっ、お嬢様のゴミを見るような目つきにゾクゾクして私のあれが反応します!」

 と顔を赤らめながらシモンもシャカシャカ混ぜた。


「ルミナ…こんな変態を好きになるのはお辞めなさい!」


「お姉様…私なんてシモン様と同じ空間にいるだけであそこが●●てしまうんです!」

 ……ダメだ。料理中に何言ってんのこいつら。

 でも私もこないだのジークフリート様とのキスでやばい。


「お嬢様こそその顔なんとかなりませんか?お二人の愛の巣から戻られてからプライベートな時間になるといつもそう言う顔をしてますよ」

 と変な事を言うシモンに


「何のことの?私変な顔なんかしてないわよ?」

 するとルミナはさっと手鏡を見せた。

 そこには赤くなりにやつき口の端には涎を垂らし鼻息荒くなった私がいる。


「くっ!仕方ないでしょ!あんな…ジークフリート様が…もう私にメロメロでキスをしまくるから!うふふふふふふ!ジークフリート様ったら!執事姿も最高で本当にシモンをクビにして私の側に置いておきたいわ!」

 と言うとシモンは


「酷い、お嬢様!何年も使えた私をあっさりクビだなんて!唆るけど嫌ですよ?」


「シモン様がクビになったら是非うちにいらして?お義母様達も歓迎してくれるはず!ああ、いっそ私の旦那様に!」

 とついでにさらっと逆プロポーズしているルミナ。

 そんな事を言いつつパンケーキを焼いてそこにチョコレートで絵を描く作業に入る。皆真剣に手を動かした。何せ食べ物に絵を描くなど3人とも初めてのことだ。


「あっ!!やだ!失敗ですわ!シモン様ごめんなさい!上手く描けない!」

 とルミナも苦戦した。犬じゃなくて猫に見えそれはそれで可愛いらしいわ!


「それは後で伯爵夫人にお出ししたらいいでしょう!」

 とシモンが言いルミナは次のパンケーキを取りまた描き始めた。


 そして私はジークフリート様がいつか描いてくれた私の絵を参考にした。あのモップみたいな綿毛の様な所に赤い点を付け加えるだけであり直ぐできた!!

 止めに私をお食べなさいとまで書いた!


「……お嬢様…流石早い!」

「その絵だと私も数秒あれば描けます」

 ルミナとシモンは言う。


「あんたの絵はどうなのよ?」

 とシモンの絵を見るとなんかめっちゃ細かくて私がシモンを踏もうとしているのにしようとしているらしいがパンケーキの面積が足りず皿にまでチョコレートがはみ出していた!


「どんな作品よ!!」


「シモン様凄いですわ!こんな繊細な踏みつけ絵!」


「ルミナしっかりして。こいつは頭がおかしいんだから!」


「お嬢様…嬉しい!もうむしろこの私の作ったパンケーキを私のあそこに投げつけ足でグリグリしてほしい!」

 と感激するシモン。無視だ!


「でも…これ誰でも作れるのよね?」

 とりあえずシモンとルミナにもモップの私を描いてもらったら本当に二人とも直ぐに描き終えたのだ。


「…誰でも描けるのはどうかと思うの!」


「でも本来さっと描くものらしいのでお嬢様は正解なのでは?」

 とシモンが言うが…私は納得できない。


「嫌よ!私は世界でたった一つのものが作りたいの!」


「…お嬢様の心意気わかりました…。ではこう言うのはどうでしょう…」

 とモニョモニョと話し…


「なっ!そんなもの!!」


「きっと…喜びます…!これなら!」


「お姉様…それなら世界で一つですわ!」

 とルミナも後押しし私は決心した。

 そして特訓を重ねること1ヶ月…。

 とうとう私は完璧なパンケーキ絵を完成させたのだ!!


「素晴らしいですお嬢様!」

 とシモンにも絶賛されとうとうジークフリート様を呼び出した。


 *

 ひと月ぶりにまた秘密の家で遭う。学校ではいつも素気なくしていたので周囲には私達が好き合っているとは悟られていない。


「ジークフリート様!お久しぶりですわね!こうして二人きりで遭うなど!」

 と腰に手を当て偉そうに私は言う。


「あ…はい!!学園でのマリアンネ様の態度が時々本当で僕嫌われたのかと…」

 と自信なさげに言うジークフリート様。


「ともかく、ひと月の練習の成果を食していただきますわ!」

 と言うと


「えっ、パンケーキ絵を描くのにひと月ずっと!?」


「当たり前ですわ!カウン家たるもの完璧でなくてはならないのです!」


「でた…いえ…それは…楽しみです!」

 と言うので私は早速キッチンに立ちパンケーキを焼き慎重にこのひと月頑張った絵を描いて仕上げた!


 ことりと机に蓋つきの皿を運びジークフリート様はそうっと蓋を外して中の絵を見て絶句した!!

 ふふふ驚いているわ!

 そして赤くなり


「あ、あのぉ…どこから突っ込めば…あのう…これはあのぉ……ううっ、もしかしなくとも…ぱ…パンティ!!?」

 と恥ずかしそうにとうとう手で顔を覆うジークフリート様!可愛い!!


「ええ!私の履いている下着はカウン家お抱えの下着職人に作らせた一品もので世界に一つしかありませんのよ!!」

 と誇らしげに言う私にジークフリート様は


「……なんか斬新ですけど下に文字で『私を食べて』と書かれていて僕がこれ食べると変態みたいになりません!?」

 と言うとシモンが言った通りの言葉を言ってきたので私はすかさずこう言った。


「ここには私とジークフリート様しかいませんの!それともジークフリート様はこの私のパンケーキパンティ絵が食べられないと!?」


「いやっ、食べます!食べますので」

 と言い慌ててナイフとフォークを手にした。ジークフリート様は赤くなり


「いっ…いただきます…」

 と言い端から丁寧に口に運ぶ。

 ああっ!ジークフリート様ったらそこから食べるの!?

 いやああああ!!


 それからモグモグと時間をかけてジークフリート様は平らげた。紅茶を飲み


「はあ…ご馳走様です!ととととても美味しかったです!」

 と赤くなり手を合わせていた。


「それは良かったですわ…」


「マリアンネ様…」

 とシモンが言った通りジークフリート様はこちらに来て嬉しそうにもじもじすると


「いいい、いつか本物を…あ…なんでも!やはりいいです…」

 と畏まる。


「もちろん絵ではなくいつか結婚したらジークフリート様だけにお見せしますわ!!ほほほ!」

 と言うとジークフリート様は


「あっ…結婚後なんですね?」

 とちょっと残念がった。

 ?


 それから私達は楽しくお喋りし、あっという間に時間が過ぎた。


「マリアンネ様…。もう特訓も終わりましたしこれからは普通にまた二人でこうして遭う時間を増やしていただけますか!?」

 となんかジークフリート様が1ヶ月も待たせたので懇願するようにお願いされた!


「そ、それは…もちろんいいですわよ!?こうしてお時間のある時なら…」

 と私も何となく恥ずかしくなるとジークフリート様はにこりと微笑み私はブワリと赤くなった。手を握られ引き寄せられひと月ぶりにキスされた。


 そして一言


「マリアンネ様と早く結婚したいです」

 と言われ今度こそ私は茹で蛸になり気絶した。


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