第33話 地下室の仕掛け(ジーク)

「ぎゃーーー!!」

「いやああああ!!」

 するとボフンとなんか柔らかいものに落ちた。


「ん!?」

 目を開けると僕達は地下室らしき所のフッカフカベッドの上にいた。

 しかもしがみついたままなので二人とも驚き赤くなった!


「シモン!あ、あいつ!余計な事を!!」


「あ、やっぱりあの方の悪戯なんですね?」


「決まっているわ…、こ、こんな事思いつくのは!」


「あっ、手紙が枕元に!」

 と発見するとマリアンネ様がそれを読む。


「ベットサイドの引き金を引くとベッドが天井まで到達し天井に隙間が現れるのでそこから出てください。他に出口はありません。


 地下室では声も漏れませんしやりたい放題です!お嬢様頑張ってジークフリート様を誘惑してください!!


 お嬢様に踏まれたい犬より…ですって!?あいつ!ふざけた事を!」

 とマリアンネ様はプリプリしている。


 僕は頑張って言ってみた。


「ゆ、誘惑してくれるのですか!?」


「えっ!!?ここここんなのシモンの策略ですわ!!ジークフリート様だまされちゃ…」

 と言うマリアンネ様に僕はお願いしてみた。


「ぼ、僕…マリアンネ様になら…誘惑されてみたいです!!」

 と。


 マリアンネ様が真っ赤になっていく!


「な、何を!人に見られでもしたら!」


「ええ!!流石に見られませんよ!」

 地下だし…。


「そんな…私に…誘惑だなんてゆ、誘惑とは……!?」

 と混乱してきて可愛いと思った。

 地下室の片隅にはなんかクロゼーットみたいなものがあった。不審に思いマリアンネ様はバッと立ち上がり


「あ、あらあれは何かしら?」

 とそこに歩いて行く。

 クローゼットの扉を開けて見ると…中にはズラリと何か衣装があった!


 メイド服…執事服…踊り子、詩人…冒険者風の服、透け透け、際どいヒモみたいな下着とかもあって二人とも言葉も出ない。


「アホなの!?あいつは!!」

 とマリアンネ様は完全に怒りマークが出てしまった。


「でも…マリアンネ様のメイド服姿見てみたいかもしれません…」

 と言うとマリアンネ様はポッとして


「ま、まぁ…それを言うのならジークフリート様の執事服も見てみたいですわ!」

 と言いお互いに納得したのか後ろを向き着替えることにした。


「ジークフリート様!絶対に後ろを振り向いてはいけませんよ!!」


「は、はい!わかりました!!」

 と言い二人でゴソゴソとメイド服と執事服に何とか着替えた。


「着替え終わりましたね!?では、3、2、1で振り返りますわよ!?」


「はは、はいっ!!」

 とドキドキしながらカウントを待つ。


「3!」


「2!」


「1!」

 二人ともくるりと向かい合わせになる。目の前に美しいメイドさんが立っている。こんな綺麗なメイドさんは見たことがない!!


「うっ!」

 とマリアンネ様はよろけたので


「ど、どどどうしましたか!?」

 と慌てて支えると


「ジークフリート様…お、お似合いですわね…シモンをクビにしてうちで働きませんこと?」

 と言われる。


「ええ!?そそそんなっ…僕こそ…こんなメイドさんにオムライスにハート描いておまじないして貰いたいくらいで…」


「なんですかそれは?まじない?ジークフリート様を呪い殺すわけないでしょう!?」


「あっ、ちが、違うんです!これは前世でメイド喫茶って言うのがあってー…」

 と説明したらマリアンネ様は驚き


「そ、そんなものがあるなんて…ジークフリート様の前世はおかしな世界ですわね…」


「あはは…」


「まぁ…どうしてもと言うなら…私が今度作ってみますわ完璧なオムライスというものを!」


「ええ!?む、無理かと!この世界お米がないのでパンケーキにケッチャプの代わりにチョコレートで絵を描くくらいになっちゃうかなぁ」

 と言うとマリアンネ様は考え


「まぁ…食べ物に絵を描くなんて斬新ですわね…これは練習が必要ですわね…」

 流石に食べ物に絵をと言う発想や習慣がない世界なので確かに練習は必要だと思う。


「絵と言っても簡単な猫とかハートとか好きという文字でも有りなんですよ。ほら食べ物が冷める前にサッと描ける程度のものですから」

 と言うとマリアンネ様は


「サッと描ける?前世のジークフリート様の世界は優秀なメイド達が揃っていたのですね…凄いわ…」

 と言う。


「私がますます練習してオムライスならぬパンケーキ絵を完璧にいつかジークフリート様にお出ししますので待っていてくださる!?」

 と真剣に言うのでおかしくなった。


「ふふふふふ!ははは!た、楽しみです!ふふ!」


「まぁ!ジークフリート様!私真剣なのに笑うとは失礼ですわよ!?出来ないと思っているのですか!?」


「いえ、ふふ、そんな事は!マリアンネ様ならきっと完璧なものを作ってくれるかと思うと楽しくて……」

 僕は嬉しくてマリアンネ様を引き寄せた。


「きゃっ!?」

 と驚くマリアンネ様の耳元で


「マリアンネ様…好きです…。キスしたいです…」

 と言うと耳まで赤くなるマリアンネ様は


「ふえっ!?」

 と声を出した。それから赤い目に魅せられ僕はマリアンネ様とキスをした。


 触れるだけのキスを何度も落として行く。トロントしてきてベッドに座りながらも夢中でキスをして


「可愛いです…マリアンネ様…」

 チュッチュッと交わすキスに翻弄されるマリアンネ様は完全にいつもと違い可愛い。


「ジークフリート様…そ、そんなに好きと言わないでください!」

 と言われる。え?ダメなの?


「こんな所で一生分言いきってしまわれたら残りの人生どうするのです!?も、もうダメです!今日は終わりです!」

 と恥ずかしがり僕の口を手で抑えたマリアンネ様は大変可愛くてもうどうしようという思いにかられる。僕も男だし押し倒していいもんかと迷う。

 しかし


「ジークフリート様そろそろ帰りましょう」

 とガコンとベッドの引き金を引き上にせりあがり天井に穴が空いたので先に出てマリアンネ様を引き上げるとソファーが移動して元に戻った。凄い仕掛けだな。


「シモンにはお仕置きが必要だけどあいつの場合喜んじゃうからとことん優しく嫌がらせしてやらなきゃ」

 と言う。


「ええ?いつもそんな事を?」


「シモンは優しくされる方が嫌なのよ変態だからね」


「うう、それでもなんか嫌ですう…」

 ともう一度キスをするとドンと胸を押され


「もう!今日は終わりですってば!ジークフリート様のばかあ!!」

 と照れてお婆さんのカツラを被り皺くちゃな皮を取り付け腰を曲げて扉からノタノタ出て行くマリアンネ様は最後に


「また!!」

 と言い去っていった。

 どうしようめっちゃ可愛いんですけど!!

 と身悶え僕も変装して鍵を閉めて馬車まで戻り家に帰った。

 それから連絡が来るまで1ヶ月かかった。

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