第38話 卒業パーティー
速やかに卒業式が行われ、生徒達はどことなくそわそわしていた。この後の卒業パーティーで好きな相手とのダンスをしたりするので緊張している。
もはや生徒会長の挨拶よりも好きな相手のダンスでいっぱいだろう。
「ここに君達の卒業を祝って………」
と挨拶し、順番に卒業の証書を受け取って行く。ジークフリート様の番になると全員うっとりと眺めて中には泣き出す娘が出た。一礼するジークフリート様は美しく鼻血が出そうだ。チラッと私と目が合った。ヤバイ死ぬわ。卒業式なのに私の心臓よ!保ってちょうだい!!と気合を入れたら睨んでる様になり周囲を禍々しいオーラで怯ませていた。
私の番になると学園長もビクビクしながら証書を渡した。ともかくこれで卒業となった。後は夕方からの卒業パーティーだ。
*
この日の為にジークフリート様が私にプレゼントしてくれた青のドレス。所々に黒い宝石があしらわれている。
胸の青薔薇ブローチもバッチリね。
髪を綺麗に結ってほんのり香水をかけお化粧もバッチリして私はヒールを履き会場へと向かった。
シモンは腕にくっつくルミナをパートナーにしておりある種の諦めが感じられた。というかルミナはここの生徒だったかしら?と聞くと
「こっそり紛れ込みましたわ!大丈夫ですわ。まだバレてないので!」
と笑っていた。絶対後で摘み出される。
既に沢山の人がいる。待ち合わせに廊下の石像の前で通り過ぎる恋人達や婚約者達を横目にジークフリート様を待つ。皆腕を組みべったりしているわ。
私も…もう既にジークフリート様とはイチャイチャしてきたので周囲は今更間が強いが…。
それにしても…あれ?おかしいわ。時間になってもジークフリート様が現れない!
「お姉様…ジークフリート様遅くないですか?」
「きっと私の為に時間をかけているのだわ」
と言うとシモンが
「男の支度なんて素早い物ですしジークフリート様なら早目に来ていてもおかしくないですよ?もしや何か事件に巻き込まれたとか!?」
と言う!
な、何ですって!?あり得る!
着飾ったジークフリート様を狙い何処かに誘拐してあんなことやこんな事を!?
と思うと腹が立つ。
「ぬぬぬ!私の目を盗みパートナーを奪うなんて卑劣ですわ!卒業式にまで!!」
しかしそこへジークフリート様を抱えて死んだ目つきの護衛のおじさんが到着した。
「マリアンネ様!遅れてすみません!!」
とジークフリート様が地面に下ろされる。キラキラとジークフリート様が眩しい!!明るいグレーの上着とズボンに黒シャツに黒いジャボを付け胸には赤い薔薇ブローチ。
そして…今日のジークフリート様は髪の毛を真ん中で分け、額が見えていた!!
ひっ!
ひいいいいいいい!!いつもは隠れて見えないジークフリート様の額が!!!きゃあああ!!
とぶっ倒れそうなのを気合いで踏ん張り止めた。
「一体どうしたのですか?」
「すみません!!途中でいろんな女性達に追われて隠れながら来たので遅くなりました!」
と眉を下げるジークフリート様。そりゃそうだ。こんな…こんな美青年がいたらハイエナ女子達は一目散に向かっていくだろう。
「仕方ありませんわね…」
と言うとジークフリート様は顔を赤くし
「マリアンネ様…とても綺麗です!マリアンネ様こそ声をかけられませんでしたか?」
と聞かれる。
「いいえ、私は…別に?」
と言うとシモンが
「お嬢様は終始睨みつけていたし、私達とも一緒にいたので皆さん声をかけづらかったのでしょうね」
と言った。
ともかく会場に行く事にした。ジークフリート様の護衛のおじさんは一人寂しく料理を食べていたが給仕の女性に声をかけては振られていた。
ルミナはわざとらしく仮面をつけていた。周囲には顔を怪我したと説明していて呆れた。
私とジークフリート様は手を繋ぎ曲が流れると他の恋人達に紛れ踊り出したけど私達が目立ち皆は避けて踊り主役になっていたが私は目の前のジークフリート様の素敵さから目が離せない。ジークフリート様もこちらを見て微笑んで鼻血を我慢するのに必死だった。
夢のような時間だ。
踊りつかれるとジークフリート様が飲み物を頼み給仕の女性が持ってきた。
シモンが先に少しだけそれを飲み毒では無いと言ったがふらつきガクリと肘をつく!
「シモン!!?」
「シモン様!!」
「大変何かはいっていたの!?」
ルミナも恐ろしくなりシモンの背中をさすっているとシモンがルミナを見てポッとしていきなりルミナに抱きつきルミナは赤くなり混乱した。
「これは!!」
とジークフリート様が驚き死んだ目の護衛のおじさんが来て
「飲み物に惚れ薬を淹れられたのだろうな…」
と言う。
「なんてことなの…ルミナとにかくシモンを休ませる事ね…」
「でもお姉様達の護衛は?」
と言うと私はにこりとした。
「私なら平気よ。他にも姿は見えないけど沢山影達が付いてるの」
と言うと周りが少しざわりとして焦ったように顔を背けだした。
全く卒業パーティーですらジークフリート様を誘惑しようとするなんて!
「危なかったですね!飲んでいたらマリアンネ様が変な男達に惚れちゃうところだった!」
と勘違いしている。自分だとは思ってないジークフリート様。可愛いわ。
危険なのでとりあえず会場から出て外に散歩に行くと裏庭辺りからいやらしい声が聞こえて仕方なく他の方を行くとまた違う恋人達がいちゃついており裏庭はいちゃつき庭と化していたので結局は廊下の空いた椅子に二人で腰掛けて話した。
黒い装束の怪しい影の一人がこれは安全な食べ物飲み物と置いてまた姿を消した。
「マリアンネ様の影の人たちは仕事できて凄いなぁ」
と感心している。
「そういえばご友人の元護衛のグレゴールさんは?」
「……僕にはもう眼中なく恋人と踊っていますよ」
とジークフリート様は疲れたように笑う。
「まぁ…」
ジークフリート様は私の手を取ると
「…マリアンネ様と卒業できて良かったです。これからは共に生きていきましょうね!僕と結婚して下さい」
と、指に指輪をはめられ照れながらも真剣に言うジークフリート様。私も赤くなりブンブンうなづく。
「もちろんですわ!ジークフリート様!うちの婿に入るからには沢山公爵の仕事を覚えていただきますわよ!覚悟なさって!!」
と言うと焦ったように
「ひえっ、わ、わかりました!が、頑張りますう!」
と情けなく眉を下げるから頰にキスを落とすとお返しに私の頰にもキスをくれ見つめ合い、私たちは少し笑いキスをしたのだ。
*
それから…卒業後は直ぐに結婚式となり女性達は泣く泣く悔し涙を流していた。ふふふ、これでもう私のジークフリート様を諦めるわね。
と二人での生活をスタートしたのだが、公爵家の使用人の若い娘のメイド達がジークフリート様と話せたとか喜んでキャッキャしていた!!
怒りで睨みつけて
「貴方達!浮かれてないで仕事をしないと首にするわよ!」
と言うと怯えて泣き出すメイド達。
もう後で首にしようこいつ。嘘泣きだし。
ジークフリート様はお父様から引き継ぎを覚えたばかりで忙しくしていたけど仕事が終わり私の所へ来ると甘えて
抱きついた。
「今日もお疲れ様ですわ」
と髪を撫でているとキスされ
「……マリアンネ様は…何か変わったことは?」
と聞かれ
「別にありませんわ!」
と1人メイドを首にしたけど黙っておいたわ。結婚しても油断ならないわね。これはもうさっさと子供を作ったほうがいいのかしら?うふふふ。
と思っているとジークフリート様が私を抱えたお姫様抱っこをして
「で、では寝室に行きましょうか…」
と言い微笑み私達は朝まで愛し合ったのだった。
*
その後は可愛い子供もでき幸せに暮らしたが隙あればと若いメイド達は目を光らせているので私も目が離せない日々なのだった。
ジークフリート様とちょっとだけ喧嘩したりした時はジークフリート様はうるうるしながら金庫からあの時の婚約契約者を取り出してきて
「この誓いは嘘だったのですか?」
と言い出すから
「う、嘘ではありませんわよ!!」
「良かった!マリアンネ…愛しています!!」
と直ぐに仲直りしてジークフリート様は私にキスをする。
「僕と離婚なんてしないですよね?」
と心配そうに言うので
「あ、当たり前ですわ!もしジークフリート様が離婚したいと言うならまた沢山の条件をつかさせていただくわ!今度こそ一生クリアできないものにしますからね!」
と言うとジークフリート様は
「もちろん!一生クリアするつもりはありませんよ!僕のマリアンネ!」
とやっぱりキスされていると子供がやってきて
「むー!お父様私にもー!キスしてほしいのー」
と3歳になる娘が強請っていた。な!まさか娘までライバルになるなんて!ジークフリート様は気付いてないが
「アメリー大きくなったらお父様と結婚して幸せに暮らすの!お母様は旅行に行くの!!」
と母を追い出そうとしている!!なんて娘!!
「アメリー…。ごめんね…お母様と結婚しているからねできないよ」
とジークフリート様が言うと頰を膨らせブーブー言う。まぁこんな綺麗な父親がいたら他の男が霞むだろう。しかし早めにアメリーの婚約者を決めなければと奔走する私だった。
婚約破棄してほしいならこちらの願いを叶えてください 黒月白華 @shirofukuneko
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