第37話 薔薇ブローチの死守

 学園ではジークフリート様に冷たくして秘密の家では相変わらずジークフリート様と可愛いキスをしたりして私達は幸せだった。


 そしてとうとう卒業パーティーが近づいてきた。この日ばかりは女性は卒業式の後めかし込んで婚約者や恋人とパートナーになりダンスを踊るのだ。


 その為学園内ではパートナーには二人の瞳の色を模した薔薇のブローチを贈り合い、制服の胸辺りに付けるのだ。


 当然ジークフリート様は秘密の家で早速青い薔薇のブローチを私に渡して私も赤い薔薇のブローチをジークフリート様に取り付けた。

 ジークフリート様は嬉しそうにして


「マリアンネ様の瞳の色の薔薇のブローチが僕の胸にあるなんて夢みたいです!」

 と言う。それはこっちの台詞だ。ジークフリート様の美しい瞳の青い薔薇ブローチが私の胸にあるなんて幸せ過ぎてもう死にそうだわ。


「ジークフリート様?浮かれて学園内でブローチを奪われないようにしてくださいね?


 実は妬んだ者がブローチを盗む事件がこの時期は多発するのですわ」

 と注意してやると


「えっ!?いやだ…そんなことする人いるんですか?僕は大丈夫だと思いますけどマリアンネ様こそ奪われてしまわれないか心配です!」

 と言うのでキュンキュンする。


「あら私は悪魔令嬢と恐れられていますからね……でも…そうですわね気を付けますわ…」

 確かに私を恐れて近寄るものは減ったが…このジークフリート様の青のブローチを奪いに来る蛆虫どもが湧いてくるかもしれないわ…。


「僕も絶対に奪われないようにします!」

 と胸に手を当てブローチを守るようにした。


「私はずっとこの瞳が嫌いでしたの。血のように赤い目が。悪魔令嬢と罵られ恐れられた瞳のおかげでろくな友達もできなかったわ…」


「マリアンネ様の瞳はとても綺麗ですよ?ルビーのようです!」


「ルビーとは何かしら?」

 と聞くとジークフリート様の前世にある赤い宝石と聞いた。


「私の瞳のことをそんな風に想っていただけるなんてジークフリート様が初めてですわ」

 と言うとジークフリート様が瞼にキスをくれる。


「お互いブローチをつけて卒業パーティーでは踊ってください…!」

 と申し込まれ私は


「わかりましたわ…」

 と言うとジークフリート様は何故か私の手袋を外して直に小指を絡ませてきたので驚いた。


 ジークフリート様ったら!大胆な!

 と悶えていると


「これ…約束というものです」

 と言う。ジークフリート様の前世ではこうして約束の時に小指を絡ませる習慣があるらしい。


「約束…わかりましたわ。卒業パーティーでは皆にダンスを披露しましょう」


「わあ!ぼ、僕練習しないと!!」

 と慌てるジークフリート様の頰にチュッとキスをすると赤くなりジークフリート様もお返しにキスを唇にくれた。


 結局ダンスの練習もそこそこにいつもみたいにキスしまくってしまったわ!


 *


「と言うわけで…私の胸に着いたこの青い薔薇ブローチを狙ってくる蛆虫娘達がわんさか出てくるわ!


 シモン!護衛の数は!?」


「はい!いつもより増やし見えない所にも影の部隊を配置し監視を徹底致します!」

 と言う。


「流石仕事が早いわね!」


「有難きお言葉!お嬢様の幸せの為にブローチは死守しましょう!これはブローチ争奪戦です!リア様とコンスタンティン先生とニーナ王女がいなくなった今を好奇と捉え動き出す令嬢達は多いかと!


 お嬢様くれぐれも一人にならぬ様に!」

 とシモンはいい卒業パーティーまでの間厳重な護衛が付いた。


 学園内では私の青の薔薇のブローチとジークフリート様の赤い薔薇のブローチを見て噂が立っていた。


「まさか!婚約破棄だと思われていた二人が!ブローチを着けているなんて!」

「普段からジークフリート様にあんなに冷たくあしらっているのにどうして!?」

「くっ!あの悪魔令嬢が怪しげな薬を使いジークフリート様を操っているんだわ!!」

 とかいう噂が飛び交っていた。ジークフリート様の机には沢山のいろんな色のブローチが何故か置かれていたりしたらしい。ジークフリート様は落とし物として教師に渡したそうだ。


 一方私は…トイレから出た時に数人の女子に囲まれた。


 唯一護衛達が関与しない女子トイレ内に来るとはね!


「ちょっと!悪魔令嬢!その青い薔薇のブローチを渡しなさい!!私がジークフリート様と卒業パーティーの相手として出るんだから!」

 と突っかかって来たのはブレンダ・ゴルド・カーマイン侯爵令嬢だったかしら?物凄い臭い香水をプンプンさせているので思わずハンカチで口を塞ぐ。



「純粋なジークフリート様の心を操り弄んでいるのね!?この悪魔!」

 すると数人の取り巻き達がバケツに水を入れたものを持ち私に向かいかけ始めた!


 私はブローチを守り濡れないよう握りしめて離さなかった。しかし異変を感じた護衛達が女子トイレに許可を得て雪崩れ込みこの惨状を発見した。数人の女生徒とブレンダ侯爵令嬢は学園側から処罰を受けることとなった。


 ジークフリート様も騒ぎを聞きつけて駆けつけた。


「マリアンネ様!!」

 と濡れ鼠になった私に青ざめていた。しかし私は優雅に微笑み


「あらお見苦しい所をお見せしましたわ。少々暑くて水浴びをしておりましたの!」

 とプライドを曲げることなくカウン家の令嬢としての振る舞いをした。


「マリアンネ様…」

 ジークフリート様は上着を脱ぎ私にかけてとうとう手を繋ぎ


「医務室へ行きましょう!」

 と強く言う。怒りが見えて周囲にいた女生徒を睨んだ。


「ジークフリート様…学園内では…」

 とこそっと言うと


「もういいですそんなの!!貴方のことは僕が守ります!!」

 と言い周囲がざわついた。


 そして大声で


「これ以上僕の愛する婚約者を虐めないでください!!僕が卒業パーティーで踊るのはマリアンネ様だけです!僕は操られてなどいません!!本当に愛しており卒業後は結婚します!」

 と宣言して私を連れて医務室に向かった。

 周囲の者は皆青ざめて見ていた。

 ジークフリート様…皆の前で私の事を愛してるなんて言って!!きゃーーーっ!!


 シモンが付いて来て


「ジークフリート様ついに男を見せましたね!良かったですねお嬢様!これからは変に隠し立てせずとも堂々とイチャイチャすればいいんですよ!」

 と言うが


「そんな…カウン家の令嬢たる者が人前でイチャイチャなど…」

 と思っているとジークフリート様は


「マリアンネ様が虐められるなら皆に見せつけてイチャイチャした方がマシです!!もう僕は遠慮しません!」

 と言われ次の日からは登校から休み時間お昼も一緒に取る事になりショックで卒倒する女生徒達が続出した。


 ジークフリート様はもう隠し立ては辞めて普通に手を握り見つめキスまでするので私ももう止められず護衛達がいてもイチャイチャして恥ずかしいけど幸せピンクオーラ全開になった。


 シモンが生暖かい目で見守る。

 こうして薔薇ブローチは守られて私達の仲を引き裂こうとする者は消えていった。

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