第12話 お見舞いの罠
私は足の怪我で学園をしばらくお休みする事になった。
「はぁ…暇だわ。でも歩くと痛むし。車椅子にいちいち乗るのも面倒なのよね」
と言うとシモンは
「そうですよね、大切な足を怪我されて…それでは私のをグリグリできなくてさぞ辛い…私も辛いのでございます!」
とシモンがいつもの変態トークをしてくる。
「そう言えばあいつはどうなったのかしら?」
「あいつと言うとコンスタンティン先生のことですね?それはもう上手く行ったと報告を受けました。
しかし流石は男色ベッケル家です。尻穴を襲われても対したダメージではなかったのか…どうやらお嬢様の仕業と気付いているのでお嬢様も今後はご注意くださいね?仕返しされますよ?」
とシモンが珍しく心配した。
「ふん!面白いわ!受けて立つわよ!大体人の婚約者に目を付ける先生が悪いのよ!リタにしてもニーナ王女も同罪だわ。私からジークフリート様を奪おうとする奴は皆敵よ!!」
「そのジークフリート様はお嬢様との婚約破棄に向けて頑張ってる様ですけどね」
とシモンが言う。
「わかってるわよ!そんな事!!」
と嫌われてる事を再認識する。とりあえず怪我が治るまではジークフリート様には会えないわね。次の条件でも考えようかしら…。
と思っていたらメイドの一人が扉を叩き
「お嬢様!お見舞いにジークフリート様とニーナ王女様が参られました!お通ししてもよろしいでしょうか?」
と言い私は仰天する!!
「なななな!何ですって!?」
ジークフリート様がお見舞いに来られたですってえええ!!
「きゃー!まだ下でお待ちいただいて!!シモン!使用人を集めてお部屋を綺麗にして!!」
「え?でもお嬢様…お部屋はこんなに綺麗ではありませんか?毎日掃除は行ってますが…」
「あんたわかってないの?ここに!私の部屋にジークフリート様が来られると言うのよ!?チリ一つ見逃さないで!!」
と既に綺麗な部屋をもう一度磨きまくり綺麗なワンピースドレスを着て私はジークフリート様とおまけの王女を迎えた。
「し、失礼します!!うわっ!眩しい!!」
と部屋に入るなり目を瞑るジークフリート様。
「私はいつも完璧に清潔な部屋で過ごしてますの!」
と言うとジークフリート様の腕に引っ付くニーナ王女は
「お兄ちゃん!とっても綺麗な部屋でびっくりだねー!!」
何がお兄ちゃんよ!勝手に妹になってんじゃないわよ!この腹黒王女が!
「すみません。ニーナ王女様が自分も行くと聞かなくて…」
と、申し訳なさそうに言いお見舞いの花を差し出した。
「これ…うちの庭に咲いていたものを庭師に束ねてもらったのです…ど、どうぞ!」
と赤くなりジークフリート様が渡してくれた。一生大事にしよう!ドライフラワーとして死ぬまで持っておこう!
「ありがとうございます…。後で活けさせてもらいますわ」
と言うとニーナ王女は
「ニーナからはケーキを持って来たよ!!?後で食べてね!!」
とケーキの入った箱を渡された。一応お礼を言うか。お前のケーキなんか食べたくないけど。
「ありがとうございます。ニーナ王女」
と言うとニーナ王女は
「それ美味しいから帰ったら絶対に食べてね!ニーナ心を込めて作ったの!うふっ!」
「わかりました…」
しつこいわね!毒でも入ってんじゃないでしょうね!?
「案外お元気そうで何よりです!」
とジークフリート様が私を心配してくれる日が来ようとは!怪我して良かった!!怪我もしてみるもんよね!
「ふっ!私は泣伏せるような真似はしませんの!カウン家たる者怪我など直ぐに完治しますからご心配なく!」
と言うとニーナ王女は
「わざわざお見舞いに来てあげたのにその態度って…。お兄ちゃん!もうお見舞いなんて必要ないみたいだよー?元気そうだしそろそろ帰ろー!?あ、帰りにカフェでお茶でもしようよー!」
とジークフリート様に引っ付くくそ王女。お前だけ帰りなさいよ!!
「ごめんなさい、ニーナ王女様。今日はこれから兄様達が剣の稽古をつけてくれるから…帰らなきゃいけないんです」
「えー?残念ーー!」
「ま、また今度…」
と言うとニーナ王女はまた引っ付き
「絶対ね、お兄ちゃん!約束だよ?」
と可愛くウインクして見せた。
うざい。
「で、ではまた!早く足と手良くなるといいですね!」
と言い、ジークフリート様と私の目が合った。数秒見つめ合ったがジークフリート様は赤くなり目を逸らしニーナ王女と帰って行った。
シモンが
「あの王女様は何というか油断ならないですね。リタ様より手強いですよ?」
と言う。わかってると言う前にメイドの悲鳴が聞こえた!
「何事!?」
シモンは
「少々お待ちください!」
と言い部屋を出て行った。しばらくするとワゴンにトレーを乗せて青ざめたメイドと共に戻ってきた。
メイドのレイナだったわね。
「レイナ…どうしたのよ?悲鳴が聞こえたわよ?」
と聞くとレイナは震えながら
「あ、あの!ニーナ王女様からいただいたケーキを切り分けていたら…うう、わ、私の口からはとても!!」
と言う。シモンは
「お嬢様どうします?これをご覧なります?」
とトレーの上の蓋に手をかける。
「あら…折角王女様が用意したのだからね…大丈夫よ…開けて」
と言うとシモンは蓋を開けレイナは目を隠して座り込み震えた。
そこには…
切り分けたケーキの断面にビッシリと虫とガラスの破片みたいなものが入っていた。
「流石の私もドン引きましたよ、お嬢様!王女様は凄いセンスです。これ程のお見舞いは中々ありませんよ!」
と言う。
「そうね。私もこんなの初めてだわ!流石王女様ね。
……では第三の条件は王女様の「お兄ちゃん」呼び禁止と…接近禁止の上王女様に非情な言葉をジークフリート様に言ってもらおうかしら?どう思う?シモン」
と忠実なる変態執事に案を相談した。
「成る程…流石お嬢様!とてもいい案だと思います!」
と拍手される。
「貴方なら妹みたいな子ができてその子を地獄に叩き落とす様などんな言葉を用意するのかしら?」
「……うーんそうですねえ。お嬢様だったら何でも嬉しいのですが私に妹ができて冷たくするのなら……コホン
『お兄ちゃんとか呼ぶんじゃねえ!気持ち悪いんだよ!いつもいつもベタベタしやがって!鬱陶しいんだよ!この我儘ブスが!!王女様だから下手に出て我慢してやってるのによ!今後僕に近付くんじゃねえ!!
いいかわかったな!僕が愛してるのはマリアンネ様だけなんだよ!!』
とかどうでございましょうか?」
とシモンは言う。
ナイスだわ。しかし
「でもそんなに言うと…王女の権限で不敬罪でジークフリート様が酷い目に合わないかしら?」
と言うとシモンは
「では付け加えて…お見舞いの時にお嬢様にこの虫ガラスケーキを贈りお嬢様が口を怪我され吐き出して大変な辛い思いをしたとジークフリート様に私から伝えておきましょうね!
それならば彼は糾弾覚悟で実行に移るかもしれませんしできないのならクリアもできませんから婚約破棄は無しということになりますね!
腹黒い王女様はこれが婚約破棄の条件だと気付くと思いますからジークフリート様の言葉を受け入れて身を引くしかないという状況下に置かれるでしょう!」
とシモンは言葉の幕を閉じた!
素晴らしい!流石は私の変態執事!
「それで行きましょう!私がこんなものを口にしたと嘘をつくのは心苦しいけど王女様が召し上がれと仰ったものは召し上がらないと言わないとね!ほほほ!」
と言い私は虫ガラスケーキの蓋を静かに閉じた。
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